第72話【過去編】名もなき勇者
・・・
ウツロは走る。
ジレンの逃げろと言う制止を振り切ってひたすら走る。
崩れるラグベール城の階段を・・・ひたすらに駆け上がる・・・
城内の者はバタバタと倒れていった。
ウツロも灰色の煙を吸うたびに体が重くなっていく気がした・・・
苦しい・・・苦しい・・・ここから逃げたい・・・
でも・・・
ミレスを放っておけない・・・
王の間からの『あの爆音』はミレスの魔法に違いない・・・
たどり着いた王の間・・・
大きな大きな骸骨の化け物・・・
周りには、たくさんの魔法使いが血を流して倒れていた。まさか、ラグベール国の精鋭魔法使い全員でも敵わないのか・・・
ミレスも瓦礫に挟まれて動けないでいるようだった。
「逃げて・・・」
ミレスの声が微かに聞こえた・・・
自分の逃げたいという意思を必死に抑え込んで、
ウツロはミレスを守るようにラグールの前に立つ。
ラグールはウツロの姿を認識する。
ラグール「・・・」
ウツロ「げほ・・・げほ・・・」
ラグール「・・・その瘴気は『魔力の低い者ほど早く死に至らしめる』・・・カスほどの魔力を感じぬお主には さぞ 辛かろう」
く・・・こんなところにも魔力格差が・・・
ウツロの周りの景色がグラグラと揺れる・・・既に満足に呼吸することすらままならなかった・・・意識が霞む・・・
魔力が低いから・・・瘴気に耐えられない・・・
魔力が低いから・・・こいつに立ち向かえない・・・
魔力が低いから・・・何もできない・・・
ラグール「そろそろ・・・そこを退け・・・わしは・・・その娘の魔力臓器を食らう・・・」
・・・
ラグールの伸ばした腕に・・・ウツロの風切りの・・・剣閃が走る。
ラグール「?」
・・・なんだ?
・・・全く痛みを感じぬ・・・
むしろ・・・・・・・そうだ・・・すごく・・・かゆい・・・
ポリポリ・・・
あ・・・
【ラグールの爪】
爪には魔術の毒が仕込んであり、触れるモノすべてを灰に変える。
ラグール「ぐあああああああああああああああああああああ」
おぞましい声が響き渡る・・・
ラグールの腕がボロボロと灰に変わり崩れていく・・・
それにあがなうべく・・・ラグールは暴れまわる・・・衝突した城の塔がガラガラと崩れていった・・・ウツロも突き飛ばされて・・・塔の瓦礫に飲まれていった・・・
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ウツロは目を覚ます・・・
静かな洞窟のような場所だった。わらのベットに寝かされている。
ひどく体が痛い・・・
トウカゲ「まだ、寝ていた方がいい・・・」
なんとか一命はとりとめたけど・・・大怪我をしているからね・・・
自分に話しかけているのは少女だった・・・ああ、この子は昔からよく知っている気がする・・・いつからだったかは・・・思い出せないけど・・・
トウカゲ「・・・といっても会うのは2度目だけど」
※トウカゲの魔法は彼女を昔からの知り合いと錯覚させることができる。
トウカゲ「これから君に
え・・・あの・・・ちょっと・・・
ウツロはドロドロした液体を口から流し込まれるのを感じた・・・意識が遠のく・・・
それにしても・・・
ボクは、君の首飾りを通して一連の出来事を見聞きしていた・・・
トウカゲは震えるウツロの手を握る。
運と偶然が重なったとはいえ・・・君にはいくら感謝してもし足りないよ・・・
本当にありがとう・・・
クラスティア魔法協会の七賢人として感謝を申し上げるよ・・・
【トウカゲ=ハイイロ】
闇の七賢人、年端も行かない少女に見えるが、実年齢120歳、闇魔術の呪いによって年をとらない。闇魔術に精通しており、闇空間を通じた瞬間移動で各国を監視する。
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