キミがいる編

第29話 もうちょい

 ㅤ宙港を探す流れ星。どこに行ったらいいんだろう。たまたま入って行った大空の下は、大海が広がっていた。


 ㅤそもそもワタシは、どこの星へ行くにも適当なところへ船を滑らせていた。そもそも宙港なかったし。でも今回は目的地もあるし。ちゃんとしたところから入って行きたい。


 ㅤでもとりあえず、海の上に船を浮かべてみた。ああ、何だか穏やかな気分だ。ちょっと前まで心の中がうるさかった。


 ㅤやっと本当に落ち着けたところで、青空を眺めた。この星は、ワタシのいる星によく似てるな。そりゃそうだ。


 ㅤこのままボーッとしてたら、日が暮れそうなので、何かヒントはないかと、また封筒のウラを見る。


 ㅤ住所を見ても、どこに行けばいいのかわからないけど、文字がうっすら光ってることがわかった。


「ほうほう、なるほどね」


 ㅤ左に舵をとったり、右にとったり。色んな方向を試すと、光り方に強弱が表れる。


「これは便利な手紙だ」


 ㅤワタシはこの光が強い方向へ、どんどん進んで行くことに決めた。

 ㅤやがて、ワタシの星では見たこともないような光景と出会ったりする。


「何だあの大きいの。空にも届きそうだ」


 ㅤ海から色んな建物が見えたが、その中でも特別大きな建物が目についた。


「変なの。あ、あっちに行ってみよう」


 ㅤ宙港らしき場所を発見した。近づくと、ワタシの星と同じ看板が見えた。ひとっ飛びして、スペースポートへ船を止めて、手続きをして、船とカバンを預かってもらうことになった。


 ㅤああ、着いた着いた。宙港の中は思ったより静かだな。売店とかあってもあまり賑わってないや。とりあえず勝手がわからないけど、封筒がより光る方へ歩いて行こう。


 ㅤ海にいたときより、ずいぶん眩しく光ってる気がするな。ていうか、ここまで来たなら誰かに聞けば教えてくれるんじゃないか。ワタシってバカだな。でもちょっと旅行したいからまず外に出てみよう。


「うわぁ」


 ㅤ都会だ。さっきも海から見たけど、近くで見るとまた違う。高い建物たくさん。なのに寂しそう。人が少ない。誰も渡ってない交差した大きな横断歩道に信号の音だけ鳴り響く。


 ㅤもうちょっと歩くと、宙に浮いた車が道路に止まってる。


「乗りますか」


 ㅤどうやらタクシーらしい。ワタシは宇宙船に乗って来たわけだから、宙に浮く物体に驚くのはおかしいけど、こんな街中に現れると驚く。


 ㅤワタシの家の車は、燃料こそ環境に優しいものを使っているけど、タイヤはついてる。ゴロゴロついてる。だって安いから。事故は起きないように出来てるけどね。


「どうしたんですか?ㅤ乗りますか?」

「あ、じゃあ乗ります。ここに行ってもらえますか」

 ㅤワタシは封筒に書かれた光った住所を見せた。

 ㅤサングラスをした運転手のおじさんは、住所を読み上げて、ナビに設定した。


 ㅤこれでもう、星の人のところまで行けるのかな。何だか緊張するな。

「じゃあ、飛ばしますのでご注意を」

 ㅤワタシはよく慣れた後部座席に座って、タクシーは出発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る