教習所編

第16話 バカな話

 ㅤワタシは今日から、宇宙を目指す。


 ㅤそのためにお父さんに、車で連れて行ってもらってる。


 ㅤ目指す場所は、「宇宙船運転免許教習所」。ここで宇宙のルールや、運転技術、マナーなどを修得し、免許取得を目指す。取得できれば当然、宇宙旅行が認められる。


 ㅤそんなバカな話があるかと思う方も、時代を遡ればいるかもしれないが、あるのだ。あるということにしてくれ。


 ㅤ入学金は親に助けてもらい今日が初日。合宿という形になり、しばらく家には帰れないのでお父さんは会社を休んで送ってくれた。


「がんばれよ」

 ㅤ車のドアを閉めるとき、そう言ってくれた。優しさと寂しさを兼ね備えたような声だった。ワタシは身勝手な人生を送っているだけに、身勝手を貫かなきゃいけない。やるからにはしっかり免許を取得し、宇宙に旅立たないと。


 ㅤ最初に、入学するにあたっての適当な学校案内があったあと、早速学科教習を受けた。


 ㅤ宇宙では現在、その規模の大きさや、意外と旅行者数が少ないこともあって、あまり大規模な交通渋滞は起きていないらしい。しかし前後左右の船間距離はしっかり開けましょうといった基本中の基本から、右左折する際の方向指示器の徹底。事故防止のため、ワープ先の確認の重要性など初歩的な話をされた。


 ㅤ他にも、隕石とぶつかったあとの対処法や、ブラックホールに何やかんやされないための心得の話もあった。ようするに「乗ったら見るな。乗るなら見るな」ということだった。


 ㅤだいぶ話が逸れてしまった気がする。とにかくワタシは、ここで免許が取得できるように頑張る。いつか、星の人に会えるように頑張る。

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