第14話 目指す
ㅤお家に帰ったら、誰かに伝えたいことがあった。
「ただいま」
「おかえり、あれ、元気になった?」
ㅤ少し大きな声でただいまを言ったワタシに、お母さんが尋ねた。
「何が?」
「だって朝、すごく静かだったじゃない。普段分けて食べるご飯とお味噌汁も、ごちゃ混ぜにして食べてたし」
「そうだっけ」
ㅤ正直、記憶がない。それに、混ぜて食べたことは過去にもあったと思うけど。心配されていたということで、とりあえず反論するのはやめておく。
「そっかごめん、もう大丈夫」
ㅤそう告げて、適当な私服に着替えて夕飯までの時間を過ごした。そして今日は帰りが遅いお父さんが帰宅する前に、夕飯の準備が終わった。
「いただきます」
ㅤおババとお母さんが揃ってるこの時間に、何となく伝えたいことがあった。
「ワタシね、宇宙に行きたいと思うの」
ㅤ突然の話に、お母さんはお箸とお椀を持ちながら、目が点になった。おババは話を聞いていないようで、聞いている素振りで食事を続けた。
「宇宙って、あの宇宙?」
「そう、行きたいと思うの」
「なんでまた」
「たいした理由なんかないよ」
ㅤ本当は、そこそこの理由がある。それは、星の人を探すため。もしかしたら同じ星のどこかに住んでいるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。というか、そんな気がしてる。だから可能性を広げるために、宇宙を目指したい。自分の人生の可能性を広げることにもなるかもしれないし。
「うーん、まぁ、マァちゃんがこれまでそんなこと言い出すことはなかったからな。お母さんはどう思う?」
「一度の人生だからね」
ㅤおババは目線はこちらに向けずに、短い言葉で賛成の意を示してくれた。
「じゃあまぁ、いいでしょう。お父さんには私から伝えておく。といってもまだ、本当に行けると決まったわけじゃないからね」
「うん」
ㅤただ、宇宙に行くこと自体は今の時代、そう難しいことじゃない。昔はそれなりに苦労したようだけど。だってワタシたちは、
「ただいまぁ」
「あれ、もう帰ってきた。おかえりなさい」
ㅤお母さんが玄関の方へお父さんを迎えに行く。当たり前だけど、当たり前じゃない家族の形。そして居間に残ったおババは、
「いってらっしゃい」
と、ワタシの目を、少し下から覗くように見て、笑顔でだいぶ早めの挨拶をしてくれた。
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