第10話 流れ星
ㅤ今、ワタシの目の前には壮大な星空が広がる。手のひらを伸ばせば、届いちゃいそうな。掴めちゃいそうな。すると、ワタシの体は宙に浮かび上がって、速いスピードで突き進んで行く。やがて、宇宙に飛び出して、漂った。
ㅤ体が言うことをきかず、ただ見えないものに流される。無数の小さな隕石にぶつかりそうになりながら、何とか平泳ぎで進んで行く。
ㅤすると、少し遠くで手を振る少年が見える。どこかの星に足を下ろし、しっかり立っている。顔は影が出来ていて見えないけど、笑みを浮かべているようだ。
ㅤもしかして、あれが星の人? ㅤうわぁ、本当に実在したんだ。ワタシのことを見ててくれたんだ。
ㅤ嬉しさで涙が生まれると、涙は一粒ずつ小さな袋を作り、風船みたいに舞い上がる。
ㅤこれが、ワタシの恋。あふれた涙の数だけキミを愛してる。ね、ワタシの気持ち、伝わったかな。届いたかな?
ㅤ星の人に近づいていくと、思ったよりも小さな背丈で、愛らしかった。ワタシでも、ギュッと包める大きさなんじゃないかと思った。
「こんにちは、マァちゃん」
「こんにちは、会えて嬉しいです」
ㅤ星の人の顔は相変わらず、よく見えないけど、こんな会話をしてくれた。
「人って、流れ星に似てると思わない?」
ㅤ生まれて死ぬということ。出会って別れるということ。宇宙の存在からすれば、とても短い時間。三回願い事を唱える暇もないくらい、あっという間。その中で大切と思える存在に出会えることは、どれだけ貴重なことだろうか。
ㅤ一瞬しか会えないキミ。一瞬でも会いたいキミ。それはまるで流れ星のようで、自分自身もまた、キミにとっての流れ星になりたい。そしてできるだけ長く、お互いの時間を眺めていたい。
ㅤマァちゃん、一緒になろう。そう言われたから、ワタシはコクリとうなずく。もう一度言われたから、もう一度うなずく。さらにもう一度言われたから、もうもう一度うなずく。それでも言われるから、さらにさらに。
ㅤ百回くらいうなずいたところで、お母さんの声がした。
「マァちゃん、何やってるの」
ㅤ朝の光は、首の痛さを連れてきた。
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