買取

@seijika

第1話 童貞力買い取ります


 俺が仕事から帰宅し自宅マンションに戻るとポストに妙なチラシが入っていた。


 童貞力買い取ります!買取に自信あり!


 いつもはポストに入っている、よくあるチラシの類いは忌々しいジャンクとして直ぐに丸めてゴミ箱にポイなのだが、今日は例外だった。


「どっ童貞力を買い取るだと」


 俺はこの禁断の香りがする妖しい文字に、興奮を隠せなかった。


 俺の名前は田中一応、38歳。政治家の公設秘書をしている。まあ俺の仕事なんてどうでも良いのだが、俺の悩みはズバリ童貞。しかもバイセクシャルなのに両方童貞。誤解しないで欲しいのは俺にも女性、男性との交際経験はある、しかしいつも良いところまでいくのだが、すんでのところで邪魔が入る。 だからかどうかはわからのだがストレス性大腸炎で入院した事が何回かある、職場のスタッフはもちろんの事先生までもが激務で俺が倒れたといつも気遣ってくれるが、実は理由はそうじゃないんだよ。


 先生、みんな、ごめんね。でも絶対本当の事は言えない。


 今まで何回卒業を試み失敗したか、実はメモしてある。


 この前通算500回目の失敗をしてしまい、やけ酒を飲み先生の参議院予算委員会の質疑応答を作り忘れ激昂を被ってしまった。まあ当たり前なんだけどさ。  


 今日はこうなったらもうテミジカニそう言う場所でも行って済ますかと思い、行ってみたのだが生々し過ぎて無理だった。


 あのバケツ一杯に捨ててある、使用済みの何かとかビミョーに残っている匂いとかが気になって金だけ払って出てきた。


 確かにこんな、チラシ気になるなんてふざけてるか頭がおかしくなってるとかしか、考えられない。


 でも、卒業出来てそのうえ金まで貰えるなんて最高だなんて、今泥酔一歩出前の俺にはそう思える。


 まあ明日は休みだし、酒の上の無礼講!冗談半分でちらしに書いてある住所までタクシーで来てしまった。

 

 事務所のような場所に入り、カウンターの前にある椅子に座って待っていると、髪の長い目の青い色白の美人が出てきた。


「起こし頂きありがとうございます」


 ウォーすげー美人しかも、出てるところ出てるしひょっとして……この人でか?


「私、童貞鑑定士の森環もり たまきと申します」


「よっ宜しくお願い致します」


 思わず名刺交換しちゃったよ!どうしよう俺の名刺が流出したら……


「まず早速ですが、鑑定を行いますので、ズボンを脱いで下さい」


「えっここで?そんな、ここ事務所ですけど」


「はい、何か問題がありますか?」


「……」


 ズボンとパンツを脱ぎ、俺は下半身を露出させていた、因みに俺はそう言う趣味は無い。


「あのう」


 やっぱりこれ担がれてるんじゃねえのか?


「少しお待ちください。今検査機器を起動しています」


 森さんは机の下から掃除機のような機械のような器具?を出してノートPCに接続し、PC上でアプリを起動させていた。


「ここの筒の部分に陰茎を挿入して下さい、そして私が合図をしたら勃起させて下さい」


「え?いやそんなに簡単にいくものではないですが」


「そうですか、ではこれをどうぞ」


 森さんは別のPCの上で動画を音を大音量で再生した。


「ああっいいです!何とか自分でしますから!」


 もの凄く恥かしい!

 こうして30分程度かかり俺はなんとか器具が要求する基準まで勃起させる事に成功した。

 

 検査結果がアプリ上で表示されると、森さんの表情が一瞬にして変わった。

「凄いですね、やはりご申告通り正真正銘の高品質の童貞ですね、今所長をお呼びいたしますので、そこで詳しいお話しを」


 暫くすると、事務所の奥の方から50代くらいの男性が出てきた。


「おお!!これは凄いな、寸止め率500か」


 えっどうして、言って無いことまで知ってるの?


「初めまして、私所長の緑川と申します、率直に申し上げますあなたの童貞力は貴重なものです、是非とも買い取らせて頂きたい、このお値段で如何でしょう?」


 俺は渡された見積書を見て唖然とした。

 380000000

「えっ……三億八千万!」


「1年当たり1000万で計算させて頂きます、お支払いですがこの事が決して嘘ではない証拠に前金として5000万円本日お支払いいたします、但し決して童貞を喪失する事無いように願います」


 俺の目の前に1000万円の帯封が付いた1万円札の束が5個置かれた。

「どうぞ、数えてください、偽札でも無いですよ。これからあなたには、ある場所に暫く行って頂きます、そこでちょっとした事をして頂きます、お仕事を完了した際に残りのお金をお支払いいたします」


 これはたちの悪い夢なんじゃないかと思えてきた。


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