妹の魔法少女変身アイテムに転生した件

ままかり

第1話

 うーっ、頭が痛い。


 昨日は眠れなかったからな。深夜アニメで時間をつぶしてたら、明け方近くまで目がさえてた。

 それにしても、こんなに明るくなっているのに、妹のユキが起こしに来ないとは珍しいな。


 いつもなら、まだが昇っていないうちから寝間着姿ねまきすがたで俺の部屋に来やがる。


 それが、休みであろうがなかろうが、

「お寝坊さんね、ヒロお兄ちゃんっ!」

とか言って、布団引っぺががしていくっていうのに。


 その後、俺が二度寝をすると、平日ならば次に制服姿の妹がおがめる訳だ。


 いや、その時ばかりはありがたいと思っているぞ、ユキ。


 まっ、いいか。


 寝ぼけまなこをこすろうと、手を顔にやろうとするのだが……。


 あれ?


 どうしてだ?


 手は、手はどこだ?


 寝起きのもうろうとした意識を振り払おうと、部屋から出ようとするも、動かない?


 足、どこ?


 どうなってるんだよ!


 俺が寝ているはずベッドも、見ていたはずのテレビもなく、見なれたはずの部屋も見慣れないものにすり替わっていた。


 全体的に明るめの桃色で統一された色調。右ボタンの服やスカート、アクセサリーなどの小物。女子向けのファッション雑誌やマンガ雑誌なんかもある。そして、目の前の大きな鏡。


 俺の部屋じゃない!


 異世界か? 異世界なのか?


 昨日見ていたアニメ……主人公が異世界に飛ばされるとか転生するとか、途中の話を見ただけで内容はさっぱりだが、そんな感じの設定だった。


 まさか、アニメが現実になるなんてありえないよな。


 それに、誰のものかは分からないが、横にあるブルーのスマホが発売されたばかりの最新機種で、新品らしくキズ一つもない。時々あるメール受信で、ディスプレイには今日の日付とアンテナマークが三本立っている。


 すなわち、異世界、宇宙、過去、未来、……どれもあり得ない、よな。


 そうだ、夢オチだ。


 ――いや、全体的に女の子っぽい部屋だから、夜中、無意識に忍び込んだ、かもしれない、という可能性を捨てきれないから、なんというか、認めたくないんだよな――。


 グダグダと変な言い訳を考えてもどうしようもないから、もう一回寝ようか。


 ……眠れねー。


 目の前のかがみにうつった化粧用けしようようと思われるコンパクト。派手にデコレーションされた宝石がまぶしいんだよ。すげー気になる。誰が使うんだよ? 違和感ありすぎ。アニメのキャラぐらいしか使わねーだろ。

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