第0話 プロローグ

 毎日が灰色だ。

 死ぬほど退屈で仕方ない。

 高校に進学し、新たな出会いを期待したのだが、そんなものはラノベの世界の産物だと思い知しる。

 結局は、中学の時と何ら変わらない。

 ただ、周囲の人間の見た目と名前が変わったくらいだ。


 さて、これから如何したものかな。

 特に遣る事も無く家に帰るのか?

 そんな事は、高橋颯太たかはしそうたの名が廃るというものだ。

 一生に一度しかない十五歳の一年だ。もっと有意義に使いたい。


 では、何をやればいいのだ?

 年齢的に言って、健全な運動か?

 だが、運動は嫌いだ。

 体格も良い訳では無い。身長なんて百六十センチ台だし、運動神経も良い方では無い。かと言って、頭が良い訳でもない。

 しかし、運動が出来ない訳でも、運動が苦手な訳でもない。ただ、根性論で鍛えられるのが嫌いだ。

 何故、クラブ活動でコーチや先輩から殴られる必要がある?

 それは、ミスが原因か? それも、嫌われているからか? さてはマゾだと思っているのかも?

 そんな事を考えても無意味だ。どうせクラブになんて入る気が無い。


 じゃ、何をやろうか。

 ネトゲ? 今時のネトゲなんてマンネリだ。

 どれだけデジタル化したと言っても、未だにVRMMOなんて実現していないのだから。

 3Dゲームなんて、デザインとキャッチフレーズが違うだけで、中身は同じだ。


 では、何をやろうか。

 まさか、勉強とか言わないよな。

 あれは最悪だ。未来像の無い者に学べと言ってそれが可能な者は、きっと何も言われなくても勉強するだろう。挙句は勉強が面白いなんて言う強者も現れるかもしれない。


 それじゃ~、ラノベでも読むか。

 これも、手を変え品を変えと色々やっているが、中身はそれほど変わらない。

 ただ、作者の個性とかあるからな。自分のイメージとマッチすれば、結構時間を潰せる。


 とか何とか言っていると、早速、暇人同盟のクラスメイトからSNSだわ。


 ふむ、何々? ばっかじゃね~こいつ! こんなの地雷に決まってるじゃん。送ってくんなよ~。


 暇人同盟のクラスメイトから送られたリンクの上には、『貴方の人生を必ず変えてみせます! 素晴らしきゲームワールドへようこそ! 基本無料ゲーム』というキャッチフレーズが書かれている。

 恐らく、これをポチッとやると、課金地獄で人生が変わるんだろうな。あはははは。

 まあ、今時ワンクリックで金を取られるような事も無いだろう。


「よし! ここはいっちょ! 俺が踏んでやるか! おりゃ~~! ぽちっとな~~~!」


 それがこの世における最後の台詞になるとは、我ながらセンスがないと言えるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る