第13話 新しい朝
寄宿舎の学生の生活は規則正しい。朝の七時には寄宿舎の中に起床時間を告げる音楽が流れる。音楽を聴いて目覚めた優子は、気持ちよく寝ている夏実を、申し訳ないと思いつつ起こし始める。
「ねえ、夏実ちゃん。朝だよ、起きて」優子が身体をゆすってみるが、なかなか目覚めない。扉をノックする音がして、麗奈が入ってくる。
「まだ起きていませんの?」
「星井さん、昨日転入したばかりで色々あったから疲れているみたいで……」
「それは分かりますけど、規則は規則。天蓋さんのためにも監督生の私が、起こしてさしあげますわ」言いながら、布団を勢いよくはがす。そのまま、ベットからずり落ちた夏実が目を覚ます。
「あれ……、ここどこ? 知らない人がいる……」辺りを見渡しながら、寝ぼけ声でつぶやく。
「ここはリンドウ女学園の寄宿舎ですし、知らない人ではありません! 昨日浴室でお会いになった、三階の監督生をやっている星井麗奈です! とにかくちゃんと支度をして授業には遅れないようにしてくださいね」挨拶と共に自己紹介をしながら、麗奈は部屋から出ていく。
「ねえ、優子ちゃん。監督生ってなあに?」
「えっと、寮生活をしている人たちの代表みたいなもので、今朝みたいに寝坊する人がいないように起こしに来たり、色んな仕事をする人なの」
「へー、立派なんだねー」感心しながら、人ごとのようにつぶやく。
この寄宿舎では、一階と二階が共同スペースになっているが、三階から上は生徒たちの部屋になっており、学年が下の生徒ほど下の階が割り当てられている。
監督生はそれぞれの階から、一人ずつ代表が割り当てられており、麗奈は入学早々に自ら立候補して担当をしていた。
「それより早く準備をしないと!」優子の掛け声とともに、着替えて身だしなみを整える。各階ごとにシャワー室やトイレ、洗面所が用意されているが、朝の時間帯は利用が込み合うため、急いで準備を整える。
朝食は一階にある食堂で各自行う。今朝の献立は、ご飯に味噌汁、焼き魚とひじきの煮物という和風のもので、栄養を考えたメニューということで、残さずに食べるようにと教育されている。
「おかわりしてもいいのかな?」夏実が茶碗をもって、炊飯器へと走っていく。
「食べ過ぎて、気分悪くしないように気を付けてね」優子が心配する。
寄宿舎と校舎は、同じ敷地内に建っているため、登校時間はわずか数分で済む。
けれども、遅刻した場合の罰則が厳しいためにほとんどの生徒は八時二五分の登校時間よりも早めに移動する。
優子も前日の反省から、夏実を促して早めに校舎へと移動する。
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