第6話
「…………どうもいらっしゃいませ」
少し強ばりながらも、心地よい
陶器みたいな白い肌、色素の薄い髪の毛、スッとつり上がった一目瞼の
何処から見てもそれは美人としか言えない、容姿をした男性(?)だった。
「…………ご用件は?」
「…………用件、は……」
「…………………………此処の、存在意義を教えて、下さらんやろうか?」
「…………存在意義、ですか……」
男性は少し考えるフリを見せた。まるで
「仁、何してるんです?」
「…………あぁ
仁と呼ばれた男性が後からやってきたその人を指さしながら言った。
二人は奥の方から……と言うよりほぼ庭から出て来た男性を見て驚いた。
赤茶けた髪の毛を後ろでざっくばらんに結び、首からは鍵をぶら下げ、クリッとした猫目はキラキラと面白そうに柊木と漆池を見ている。
その男性がもう一人の頭をポンポンッと軽く撫でて言った。
「ふぅん……『龍忌堂』の存在意義か。そんな事訊くなんて、よっぽど此処に
「…………然もありなん……更夜撫でるな」
色素薄い系の男子(恐らく男性という年齢だろうが)が優しい系男子(男性という年齢だろうが……)の手を払い除けながら言う。
しかし二人の関係はなんなのだろう? 見た所家族というより年の近しい友人のようにも見えるが……。
「更〜夜〜? まァた仁を弄ってるんですかァ?」
「弄ってないよ、撫でてるだけだ」
「…………それが
「「…………」」
──…………何だこれは?
──…………何やこれは?
漆池と柊木は同時に思った。『
目の前に居る恐らく『龍忌堂』の関係者達だろうが……
「あはは御免って〜…………おっと御免。君らの事も放ったらかしだったね?」
「「!?」」
庭から来た男性が不意にこちらを向く。思わず身体を少し揺らしてしまう。
「あぁ御免御免別に取って食べようって訳じゃないんだ。だからそんなに身構えないでくれると嬉しいかなぁ?」
「え、あ……すいません」
「あっ……すんません」
「後そんなに堅苦しくしないで良いよ此処は
「「はぁ……」」
男性の言葉に二人揃って気の抜けた声を上げてしまう。
クスクス……
横から笑う声がしてそちらを向くと
「! 狐……ッ!?」
「あっ! 狐や!?」
「え? 何々君らあの子を追って此処に来たんだ?」
「…………いやァ久々の街は結構様変わりしてたね〜」
ポヒュッ
乾いた音が聞こえたと思ったら目の前にクリッとした狐目の青年が立っていた。青年はニコニコ笑いながら『仁』と呼ばれていた青年に抱きつく。
「じ〜ん! これほら前に食べたい言ってた和菓子! 後で食べよ〜?」
「…………解ったから離してくれないか……」
「仁は人気だね〜」
「人気だな。本人も満更じゃ無さそうだしな」
「え〜やだよ〜?」
「おま、客来てんだけど? 後そこ和むな俺達を見て! 止めろ!」
「え〜楽しそうじゃん?」
「楽しそうだし良いだろ?」
四人で和気藹々とする『龍忌堂』メンバーを見て蒼汰と優弥は顔を見合わせる。
──本当にこの人たちが『龍忌堂』の人たち?
──どうやろ……けど狐は確認したから間違いは無いんやと思うんやけどな……
──そうか……
──取り敢えずどないしよ……?
──解んない……
訳が解らず思わず顔を見合わせる。
シャランッ
「あれぇ? お客が珍しーく居るんだねぇ? しかも人間ー」
「「「「あ、龍神堂」」」」
「へ?」
「は?」
「やや、さっきぶりー? 仁に豆腐渡すの忘れててさぁー?」
「あ"、豆腐頼んでたんだった……」
「え、なんで豆腐?」
「誰かさんが
「「「「「ダジャレかよ!?」」」」」
「うん、まァダジャレ」
ズコーッとダジャレを言った本人と龍神堂以外の五人がコケる。
──こ、この人意外と抜けてる人……!?
──ちょ、豆腐メンタルやから豆腐頼むて……! ダジャレがダジャレになっとらへんやんか……
言った本人はきょとんとしつつ、“龍神堂”と呼ばれていた男性から豆腐を受け取る。
豆腐を持ってきた男性はニヤニヤと笑いながら他の三人を眺めている。
「…………………………龍神堂まだ気にかかる事が?」
「あ、バレたか。……ちょっと奥借りるぜ、旦那」
「構わないよ~ただ酒は禁止だからね、龍神堂~?」
「え~? ダメか、酒? 仁の酌とか、キレイなのに~」
「しねぇよ、糞イカレ頭」
「仁、口が悪いですよ?」
「あはは、仁口悪~♪」
「ちぇ……仁、その言い草は酷いぜ?」
「…………………………事実だろ、
「少々の酒じゃあ酔いません~だ」
「…………………………少年たちはこうならないよーに、至極悪い例だからなコイツは」
「はいはい毒は奥で聞くからなー?」
「ちょ、押すなって……」
「え、結局なんなん……?」
「どういう、事……?」
「取り敢えずお茶でも、いかがです?」
仁と呼ばれていた長髪の男性はあとから現れたまったり系の男性に背中を押されて奥の部屋に消えていった。
困惑している僕らに更夜と呼ばれていた猫目の男性がティーカップを差し出してくる。
そして一口飲んで、僕たちを楽しげな目で見つつ言った。
「──それで、お客様の願いは何ですか?」
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