虚空人〜いつわりびと〜
幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕
第1話
チリンチリン
ー鈴の音が聴こえる。誰か来たのだろうか……?
鈴の音と共に懐かしい童歌が聴こえてきた。
通りゃんせ〜通りゃんせ〜こ〜こはど〜この細道じゃ〜天神さ〜まの細道じゃ〜御用の無い者通しゃせぬ〜どうか通して下しゃんせ〜この子の七つのお祝いに〜御札を納めに参ります〜行きは〜ヨイヨイ帰りは怖い〜怖いながらも通りゃんせ〜通りゃんせ〜
ーアァこの唄は……あの子が来たんだな……
店の方からガララ〜っと扉が開く音が聴こえたと思ったら、幼い少年の声が聴こえてきた。
「こ〜んに〜ちは〜っと。じ〜んさ〜ん何時もの貰いに来ましたよ〜♪」
「……ハイハイ、今行きますから落ち着きなさい。…………座敷童子」
そう返事をして仁と呼ばれていた店主は襖を開けて、店の方に顔を見せる。仁の顔を見て嬉しそうに鈴を鳴らしながら、座敷童子の少年はニッコリと笑った。
「どうも〜♪ 十五日ぶりですね〜♪」
「……座敷童子この間あげた金平糖、もう食べちゃったんですか…………」
「うん〜見てたら我慢出来なくって〜♪」
「……本当に好きなんですね……ハイ金平糖。どうぞ」
「わ〜ありがとー♪ 此のトゲトゲのお菓子好き〜♪」
ニコニコ受け取って早速一粒取り出して口に放り込む座敷童子を見て、仁はフワリと苦笑を浮かべながら、ふと気付いたように
「……そう言えば座敷童子、新しく憑く家はもう決まったんですか?」
「ン〜まだだけど良さそうな家はあるから、どうしようかな〜って迷ってる所〜♪」
「……なるべく早く決めないと、他の誰かに獲られてしまいますよ?」
「うん解ってる〜♪ じゃあボク帰るね〜♪」
また一粒口に入れると座敷童子は手を振って、帰っていった。
仁は其の後ろ姿を見送りながら、感慨深げに呟いた。
「……そうか、アレから時間が経ったんだな……」
「仁、ご飯が出来ましたよ?」
「……ン……今行くよ」
頷きながら言い、もう1度少年が去っていった方をチラリと見て、部屋に戻っていった。
ーー此処は摩訶不思議な森の中にある、不思議なお店『龍忌堂』。不思議な店員たちが居て、此れまた不思議な客達が集まる。……興味があるなら行ってみるといい。
但し無事に辿り着けるかどうかは保証しないが。だが辿り着ければ、もう退屈な日々には戻れないだろう。ソレでも良いのなら……。
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