灰色の月は傾き
哀川那月
第1話序章
暗くたちこめた霧の中を一人の男が歩いていた。男は左の足を微かに引きずりつつ、マチの外壁の前で立ち止まる。
「今日は此処で休ませて貰え。」
男を包む影からしゅるりと狐が現れ男の足に絡みつく。男は目を細め狐を撫でた。
「…そうだな。此処にはまた何か巣食っていそうだ。」
「ああ、デカイやつだ。楽しみだ。」
狐は男と同じように眼を細め舌舐めずりをする。丁度良い獲物が見つかったかのようにその口は三日月形に広がっていた。
「喰い過ぎない方が良い。また目を付けられるのはごめんだ。」
「分かってるさ、それ位。」
「なら構わない。行くか。」
男はロープを翻しフードを被って門へと近付いた。狐もまた男の影に消えていく。
男は、いやこの奇怪なモノ達は周囲に静かなざわめきを残しマチの入り口へと去って行った。
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