頑張ったご褒美に一杯いかがですか?

週末びーる

プロローグ


私の父はどこにでもいるようなサラリーマンでした。


金曜日の仕事終わりは華金と呼ばれて夜の街で同僚と居酒屋でお酒を交わし、時には自宅で晩酌をして母と談笑しているときもあった。


そう、私の父はお酒をアルコールを愛していた。


真夏の仕事終わりに飲むビール、真冬に震えた帰宅後の熱燗、そして母と出掛けて味わう様々なカクテル。


未成年にはまだ理解するには早く、大人達だけが知る世界。


幼い頃の私には理解出来ずにその違う世界に憧れを抱くこともあった。


20歳を迎えていつの日か私の両親と同じ食卓を囲みお酒を酌み交わす瞬間を心待ちにしていたが、16歳を迎えてそれは叶うことはなかった。


自宅で就寝して、次の日の朝を迎えて目を覚ますと視界には自室ではなく、辺り一面が草木で生い茂り、川のせせらぎが聞こえる緑豊かな大地が広がっていた。


見たこともないような植物に小動物。


何時間に感じた一瞬で高校の友人が言っていた異世界という言葉が頭をよぎった。


不安に押しつぶされそうになり、身動きも取れず見も知らぬもしない魔物の恐怖に怯えたりもした。



当時のことを思い出すと私は運良かったと言えるだろう。


私が元いた地球に帰るすべも分からず、ただただ年月だけが経過していく中で私の心に残る一つの願い。


当たり前だと思っていた今では叶わない願いをこの異世界に住むすべての人達に



「“フラワー”本日も張り切って営業させていただきます」

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