追いかける背中

先輩を初めて見たのは中学三年の春。

不真面目な陸上部員の私が補欠で行った陸上大会で高校生の先輩を見た。

美しいフォーム、そして凛とした横顔となびく髪に心を奪われた。


それから私は先輩を追いかけて同じ高校に行き陸上部に入った。これで二年は先輩の近くにいられる。


でも先輩はいつも私の前を行く。

どんなに速く走っても先輩のペースについていけない。

不真面目ではあったけど走る事には自信があった。でもレベルが違った。

私はずっと先輩の背中を見ているだけ。

先輩の視界に入ることすらできない。


もっと真面目に陸上をやっていれば、もっと早く先輩に出会っていれば追いつけただろうか。


結局私は、二年かけても先輩の影さえ踏めなかった。

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