恋はこんなにも

先に昇降口を出て行く彼。夕日が横顔を照らす。

この時間が私はあまり好きではない。彼の表情が暗く見えるから。

今日は一緒に帰ってもいい日か、それとも一人になりたい日か。


一瞬泳いだ右手を強く握り締める。


成績優秀でクラスではみんなに頼られている私がこの有様。躊躇いなんて私らしくもない。でも彼の事になると臆病になるのもまた私。

先生に怒られたって自分の意見を言う私が、彼の前では怖じ気づいてしまう。


すると「どうしたの?」と言って彼が私の泳いだ右手を握ってきた。

「え?いや、別に」

突然のことで今度は目が泳いでしまう。


恋はこんなにも恐ろしい。恋は普段冷静な私をまったく変えてしまう。

そして恋は、こんなにも愛おしい。

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