20セントの男

この町では人の命など2セントの価値しかない。


「誰かを殺そうと思ったら酒場へ行け。鉄砲弾1発分の金でミルクが飲める」


町の保安官事務所にこんな言葉がデカデカと書かれている。

鉄砲の弾1発とミルクが同じ値段。つまり人の命とミルクが同価値という訳だ。

腐った町だ。

でも俺は上手く立ち回ってこんな町でも生き抜いている。2セントの人間だけにはなりたくないものだ。


そんなことを思いながら、酒場で人の命よりちょっと高い酒を飲んでいた。

そのはずだったのに。

気づけば俺は、その酒場の路地裏に転がっている。

人に恨まれる覚えはあるが、2人合わせて10発も打ち込まれるとは思わなかった。

よかった。

俺には20セントの価値があったわけだ。

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