いいてんき

「今日はいいてんき」

彼女は言う。

でも外は激しい雨。傘を揺らすほどに降り注ぐ。


僕は雨が嫌いだった。

雨の日は外に出てもなにも楽しくない。むしろイライラすることばかりだった。


でもその雨空を見上げながら僕も頷く。

「うん。今日はとてもいいてんき」

この言葉に、目の見えない彼女は笑った。


雨が降っている時は家にいるのではなく、逆に雨の日デート。

僕たちは一つの傘に二人で入って街を歩く。


傘に降る雨の音。

水たまりを跳ね上げる足音。

草木に当たる雨の音色。

たまに腕に雨が当たって感じる冷たさ。

雨音にかき消されないよう耳元で話す声。

腕から伝わる互いの体温。


雨の日はこんなにも彼女を楽しませる。

だから今日はいいてんき。

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