ヒラリヒラリ

ヒラリヒラリと舞い散る花びらを見ながら、あなたはとても綺麗だと呟いた。

その綺麗な瞳をまっすぐに向けて桜の花びらを見つめている。


でも私は何も言わない。

言葉が喉まで出かかって、でも何も言うことができなかった。


だって私に向けて呟いた言葉ではないから。

私が欲してやまない大事な言葉を、あなたは容易く桜に向かって言う。


ヒラリヒラリと舞い散る桜は気にするのに、泣きながら落ちる私の言の葉には一切気を留めない。


あなたの瞳がとても綺麗で恋に落ちた。それが私に向けられるのが嬉しかった。

でもそれは私の勘違いだったみたい。

桜を見るような瞳は、私には一度も見せてくれなかったから。


静かに落ちる私の言葉は、ただ枯れて朽ちる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る