最後の願い

彼女が席を立ってからずいぶん経つ。長い手洗いだ。


もちろん最初に席を立ったのは僕だから文句は言わない。

彼女との最後の時間を引き伸ばしたくて、煙草を吸いに行った。

彼女との関係はとっくに終わっているのにこんなことをするなんて、本当に女々しいと思う。

でもその時間ももうすぐ終わり。


彼女が戻ってきた時に、結婚を祝って乾杯をしようとダブルで頼んだロックのウイスキーも、氷が溶けて薄くなっている。

きっと俺たちの関係も、これからは薄く味気のないものに変わっていくのだろう。

そしていつかはそれも無くなるのだ。


俺より他の男を選んだことに嫉妬がないわけではない。

それでもせめて格好はつけさせて欲しい。


これが最後のお願いだ。

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