11月2日・9日・14日

 ごうん、ごうん、と洗たく機の鳴る音を聴きながら、読書タイム。

 お母さんが定期的に、洗たくをしてくれてる。自分でやってもいいんだけど、こういう時はつい甘えちゃうよね。

 ごうん、ごうん、がたがたがた……。

 機械の動く音って、独特で気持ちがいい。特にここの洗たく機は全自動じゃなくて、今時まだ二層式なんだよね。昔、家にもあったな。おばあさんがよく回してた。

 今は実家の洗たく機も全自動で、洗たく完了のピロリロリンって音以外はほとんど鳴らないんだけど、わたし的には二層式の方が好きだったりする。

 適度に音があった方が、耳の奥がふわっとして心地いい。無音ってさ、耳がキーンってなる気がするんだよね。耳鳴りに似てる。

 だからお母さんに頼んで、ミュージックプレイヤーを持ってきてもらった。わたしの好きな曲がたくさん入ってる、いわゆるオーダーメイドみたいな。自分の好きなようにカスタマイズできるって、いいよね。

 眠れない夜なんかに聴いて、過ごしてる。基本的にここでは、いつ寝ていつ起きてもいいから、好きなようにやってるんだ。

 だけどあんまり遅くまで起きてると、近藤先生に怒られちゃうから、これはわたしだけの秘密。


 今日も勿忘草に水をやる。

 先月よりだいぶ大きくなってきた。葉っぱの一枚一枚にツヤが出てて、みんな元気。

 植え替えまで、もう少しかな。


    ◆◆◆


 今日は勿忘草の植え替え作業。

 お母さんと近藤先生に手伝ってもらって、大きな植木鉢に元気なのを二、三本。外のプランターも一つ増やした。

 前に近藤先生にもらった台は、窓とベッドの間のスペースに置いた。そこに、植木鉢を置くんだ。これで、寝てる時にも勿忘草が見える。窓から日光も差し込んで、ちょうどいい。一石二鳥だね。

 広い台だから、水やり用のじょうろと、アブラムシ退治用のピンセットも一緒に。これからのために、一応殺虫剤も置いてある。

 おばあさんが天然素材にこだわる人だったし、あんまり農薬を使うのはわたしも好きじゃないんだけどね……でも、枯れたら嫌だし。

 これからわたしも、こまめにお世話できなくなるかもしれないし。


    ◆◆◆


 食堂でたまきさんや生田くんたちとお話。

 勿忘草を育てているって話をしたら、すごいねってほめられた。特に生田くんなんかは男の子だからか、自分だったらそんな根気強く育てられませんよって言ってた。どうせ三日で枯らしてますよ、だって。

 なんかかわいい。


 みんなで今度見に来てもいいかって言ってくれた。

 あんまり見せびらかしたくないんだけどなぁ……でも、みんな大好きだから、しょうがない。わたしも、自分からこの話振っちゃったのが悪いと言えば悪いんだし。

 ここの人たちも、わたしにとってはトクベツだからね!

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