第9話
始まりは何時からだったのだろう。
昔から本を読むのが好きだった私は、他の女の子と大差なく王子様にときめいたりしていたわけであるが、実際に恋をしたことはなかった。誰かを好きになるということがなく、実を言えば物語を読みすぎたせいで随分と理想が高くなってしまったのだと思う。
『雨宮…さん?』
『はい…?』
初めての会話は彼からだった。
『あいつ、見なかったか?』
『あいつ?』
『小森樹、今日一緒に帰るって言ってたのにあいつ何処行ったんだか』
『樹ちゃんなら職員室に提出物出しに行ったけど…?鞄置いていったからここで待ったら?』
『んじゃそうするわ』
高校1年の頃、担任が女の先生だったこともあって教師にはたくさんの小さなプランターが並んでいた。園芸部である私にはお花の管理が任されていてその日も春川君が教室にいる間、水やりをしていた。
『花、好きなの?』
一瞬自分の名前が呼ばれたのかと思い勢いよく振り向いた私に彼も驚いた顔をしていた
『顔、真っ赤』
そう言って彼は笑った。
ある意味それが始まりだったのかもしれない
いや、始まりであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます