第7話
『あの…ちょっと聞いてもいい?』
『はいぃ…』
『この距離感は…なに…?』
水野さんと初めての帰り道、なぜか距離は広がる一方でやっとこさ話しかけてみればさっきからこの反応ばかりである
『あの…祐希くんの隣を歩けるなんて思ってなかったから…緊張して…』
『そんなこと言われても俺、そんなにかっこいいわけでもないし、モテるわけでもないよ?』
『そんなことないです!!』
いきなりの大声にびっくりするとすみません!!と返ってきた。
続けてくださいと手のひらを彼女に向けると小さな声で一言一言丁寧に話し出した。
『祐希くんは自分が思っているより周りに興味を持たれています…よ?』
小さい声が聞こえるようにと少しずつ彼女の方に近づいた。
『そうなんだ?』
『はい…それこそ、こんな私がお隣を歩けないくらいの人気っぷりです』
『そんなことないよ。水野さんきれいだし』
『そんな!!』
徐々に詰めていた距離が一気にまた開いた。
『私なんて…何をしても人より上手くできなくて…あの子みたいになりたいって思っても自分では努力しないし…元から持ってるものがみんなと違うんです…みんなより下なんです…』
『そんなこと言うなら勉強は?水野さんいつも上位入ってるよね?10位まで張り出される掲示板見ていつもこの人いるなって思ってたから』
『勉強なんて誰にでもできるじゃないですか…?』
『そんなの他のものだって同じでしょ?頑張れば誰にだってできることだよ。水野さんが特別できないんじゃなくて、みんなの経験値が上なだけだって』
もともと勉強なんて全然力を入れていない俺がその時だけ頑張ったからと言って彼女の上を行くことなど出来やしないのに、こんな時はうまい口回しができてしまうのだからいつまでたっても中途半端なことしかできないのだろう。
頭の中でそう考えていると隣から控えめな笑い声がした。
『そんな風に考えられるところが素敵だと思います、励ますんじゃなくて気付かせてあげられる優しさが皆さんを引き付けているんだと思います』
初めて目が合った彼女の言葉はきれいな音で深く響いた。
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