第741話 衝撃のえっちゃんで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
「幼女趣味だなんて汚らわしい。大人の男は、大人の女と恋愛するべきだよ」
ロリダイコンのアイディンティティが崩れる。
ぐにゃり、カイ〇のように顔を歪める桜くん。
あろうことかダイコンは、溜めに溜めた創刊号からのお宝グッズ――コミックL〇――を処分しようとし出した。
はたして本当にダイコンはロリではなくなってしまったのか。
そして、コミックL〇を燃やすなどという、ヘイト表現をして大丈夫なのだろうか。茜〇社の頑張っている編集者の皆さんに、余計な迷惑をかけはしないのか。
まさかまさかの成人コミック編集部まで弄るという荒業。
はたしてでていけあんたは九尾さんの明日はどっちだ――。
「って、これどっちかっていうと、同時連載している
「おい!! こっちはそういうのナシって話じゃなかったのかよ!!」
割とコミックL〇のネタは、ダイコンが出てきてからやっている気がしますが。
まぁ、きっと大丈夫でしょう。こんなWEBの泡沫作品に声を荒げるほど、出版社は暇しておりやしませんって。
そんなことよりも、ロリでなくなってしまだダイコンはどうなるのか。
このまま普通に成人女性といい感じになってしまうのか。
それでいいのかダイコン。
二次元ロリこそ至高にして最強ではなかったのかダイコン。
迷走するダイコンの明日ははたしてどっちだ。
◇ ◇ ◇ ◇
私の名前は市原H子。
ここ、ダイコン家に古くから仕える家政婦でございます。
ある日――現当主にして未だに独身のダイコンタロウさまが、我が家のメイドの一人にして問題児であるコヨーテさんの職場で怪我を負ったと聞かされました。
小さい頃からかいがいしく世話をしてきたぼっちゃん。
子供のいない私には実の子のような存在。
そんなぼっちゃんが怪我をして命が危ない聞いて、平静でいられましょうか。
「いつもの病院でございますね。えぇ、今すぐ参ります」
私はいてもたってもいられず、長年連れ添った愛車――ヤマハパッソルに跨って国道二号線を突っ走ると、ダイコンぼっちゃまが入院されている阪内の総合病院へと駆け付けました。
どうかどうかご無事で。
最悪、傷が残ったとしても、それでも生きてさえいてくれればどうにでもなる。
先立たれたダイコンカブロウさまたち。
どうか坊ちゃんをお守りください。
そう思って病室を訪れた私を待っていたのは。
「えっちゃん。どうしたんだいそんなくしゃくしゃな顔をして。やめてくれよ、僕のために泣いたって仕方ないじゃないか」
「……坊ちゃん!?」
いい意味で変わり果てたぼっちゃんでございました。
あの、外面はまぁまぁ及第点、けれども中身がぼろっかす、ネットの暗部に牛乳をこぼして雑巾でふき取ってそこから悪意を抜いた感じのアホとしか形容できないぼっちゃんはいずこに。
まるで、メキシコに吹くさわやかな風のような好青年が、そこには待っていたのでございます。
不肖、この市原H子。
齢七十を越えてじゅんとくるものがありました。
さらにさらに。
「これを全部処分しようと思うんだ。流石にこれだけの量を運び出そうと思うと、一人じゃ大変だからね」
長年我が家を悩ませてきた坊ちゃまの幼女趣味。
その諸悪の根源であるコミック雑誌を、なんと捨てると申されたのです。
これまで何度言っても。
「いやや!! こればっかりは、これっばっかりはえっちゃんの頼みでも捨てられへん!! ロリコン作家は命を懸けてロリコン漫画を描いてるんや!! そんな命の痕跡を、魂の咆哮を、ワイは捨てることなんてできへん!! これはワイの宝や、ワイらロリコン全ての希望なんや!! 絶対に捨てへん!!」
と、頑なに聞かなかったあの坊ちゃまが、なんとついに脱ロリコン宣言を果たしたのです。
この時ばかりはH子も流石に涙を禁じ得ませんでした。
ついに、ついにお坊ちゃまが、大人の女性のよさに気が付いてくれた。
現実に目を向けてくれた。
もはや居てもたってもいられません。
「ついにこの時が来ました。苦節二十年。お坊ちゃまのために、私が自ら足を運んで、日本各地のやんごとなき血統のご息女に声をかけ、それとなく集めた精鋭メイドたち。貴方たちが、お坊ちゃまを誘惑するその時が」
タロウおぼっちゃまの代にてつぶれると思われたダイコン家。
その命脈を保つべく、長きに渡り私がめぐらせてきた策謀が、ついに発動するときが来たのです。
今を逃しては、お坊ちゃまにふさわしい女性をあてがう機会はない。
乗るしかない、このビッグウェーブに。
招集したメイドたちを前に、私は目配せをします。
お坊ちゃまがロリコンということで、この日まで必要最低限の接触は禁止としてきましたがそれもここまで。こうなればもはや細かいことはどうでもいい。
「夜這い、誘惑、逆〇イプ、人工授精、もはや方法なんて問いません。お坊ちゃまとの間に子をなした者を、我がダイコン一族の正式なる奥方とします。勘違いしてはなりません、これはただの跡目争いではない――女たちの戦争です」
「「「「サー・イエス・サー!!」」」」
「ダイコン家の莫大な財産を手に入れたいか!!」
「「「「サー・イエス・サー!!」」」」
「一生不自由なく、遊んで暮らせる安定が欲しいか!!」
「「「「サー・イエス・サー!!」」」」
「坊ちゃまの顔は好みか!!」
「「「「サー・イエス・サー!!」」」」
「ならばよし!! 存分にしあえ!! もはや、主らを止める約定はない!!」
行け、ダイコン家セクシーメイドたち。
今こそ、長き宿縁に決着をつけ、そして、カブロウさまの墓前に、タロウ坊ちゃまのお子様の顔を見せる時が来たのです。
そのためならばこの市原H子。
たとえ悪鬼羅刹とお坊ちゃまに言われようとも構わない。
「なんとしても、坊ちゃまを結婚させてみせる」
そんな強い意志で、私はセクシーメイド部隊を我が主にけしかけたのでした。
◇ ◇ ◇ ◇
「あ、えっちゃん。悪いけど、メイドさんたち全員解雇してあげてくれる」
「ホワイ!! タロウボッチャマ!!」
「いや、彼女らええとこのお嬢さんでしょ。えっちゃんが各地を行脚して集めて来た。僕の嫁にって気持ちはありがたいんだけれどさ――まぁなんていうの。そういうのも、やっぱり風聞がよろしくないと思うんだよね」
「ロリコンよりはよっぽどマシですよ坊ちゃま!!」
「いやいや、メイドを手籠めにするのもなかなかだよ。という訳で、ナシナシ。みんな、実家に帰ってもらって。あ、コヨーテちゃんは別ね。彼女はうちの家族みたいなもんだし」
「やったデース!!」
「なんで、なんで私のメイド隊がダメで、こんな、こんなぽっとでの小娘が」
「いやいや、ダメでしょ。この子をこのまま社会に放り出したら。そっちの方が問題だよ。道義的に」
腐ってもダイコン。
性格が変わってもタロウさま。
ロリコンでなくてもそこはご慧眼。
H子の野望は、儚くも夢と散ったのでした。
「では、H子は!! H子ではダメなのですか、タロウぼっちゃま!!」
「……老人ホーム、ちょっと早いけど行く?」
「メイド長さん、ちょっといくらなんでもおつかれサマーデース!!」
「ちっくしょぉおおおおおおおっ!!」
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