第641話 電車乗務員で九尾なのじゃ
まさかお前、鉄道までダイコンホールディングスが所有しているとは誰が予想できようか。それじゃまぁ、次は電車乗務員さんでもやってみますかと、そんなことを言いだした瞬間に、俺はちょっと目の前の男が、間違いなく財界トップクラスの人材であるということを見せつけられて青い顔をしてしまったというものですよ。
まぁ、そりゃともかくとしてだ。
「はーい、皆さんこんにちはー。俺が、わくわくダイコンランドの機関車運転手のダイコンお兄さんですよー。これから15分だけだけれども、よろしくねー」
「「「はーい」」」
「まっ、常識的に考えれば、それが普通なのじゃぁ」
「せやな」
持っていたのは鉄道会社ではない。
ちょっとした小型SLが走るアトラクションであった。
そう、ダイコンランド。
ダイコン社長がめぐまれない子供たちのために、割安な入園料で遊べるように作った遊園地。
今、日本でディ〇ニーに次いで、ホットと言われている遊園地。
その中にあるアトラクションのキャストに、ダイコンは扮したのだ。
うーん、まぁ。
今回のダイコンのアルバイトの要諦は、この世間知らずのおぼっちゃまに、いろいろと業務にチャレンジしてもらって、うまくいかないのじゃーと加代ちゃんよろしくなってもらうことだ。
ほんでもって、シュラトの奴に、ダイコンでも難しいだろう、働くってのは大変なんだよと理解してくれるものだ。
なので、できれば社外の企業で働いてもらうのが良いのだが――。
「こういうアトラクションのキャストって、割と大変なのじゃ。ディ〇ニーとかだと、一芸を持っていないとやれない仕事なのじゃ」
「それでなくても子供の相手だろ。相当なソーシャルスキルが求められるぜ」
何気にこの手の仕事は難しい。
はたして、ダイコンがそれを認識しているのか、それとも、気まぐれでやったのか、はたまた前からやりたいと思っていて今回の件を機にやったのか。
そこんところは分からない。
分からないけれど、割と大変なことになりそうだぞ。
一つ、お手並み拝見といこう。
そんな気持ちで、俺と加代とシュラトはダイコンをしばし見守った。
「はい、という所でね、まず見えてきましたのはダイコンパークの真ん中にあるダイコン湖でございます。広さは東京ドームの十分の一くらい。しょっぼい湖ですね」
「絶妙に分からん喩をぶっこんでくるのじゃ」
「いやけど、東京ドームのくだりで、おっさんたちは笑っているぞ。東京ドームで喩える必要ありますって感じだ」
そんな親たちにつられて、子供たちも訳も分からないままに笑う。
場の空気で笑わすとは、ちょっとセコイがやるじゃないか、ダイコン。
やはり、何をやらせてもそこそこにそつなくこなす男だけはある。
そう思ったのだが――。
「えー、それで、このダイコン湖にはですね、時たま謎の怪物が現れるんですよ」
「のじゃ!! 謎の怪物!!」
「池の魚を狙っているんでしょうね。その怪物は――ダイコンッシーと呼ばれています。ちなみに有名漫画家さんに描いてもらったダイコンッシーの姿がこちら」
テロップを出されるとあーら不思議。
人間を三千年に渡って苦しめて、沖縄の海辺りに封印されている、ヤバそうな絵面のヤバそうなモンスターが書かれていた。
そして、それは、なんというか――。
そう。
「……加代?」
「してないのじゃ!! ダイコンッシーしてないのじゃ!!」
白面の狐っぽいこうなんかそんな感じをしつつ、加代さんの面影を偲ばせるものだった。
うん、これ、間違いない。
あきらかに加代さんだ。
「のじゃぁ!! ここ最近は
「……みなさん、食卓の白身魚ですがあれってなんの魚かご存知ですか?」
「……そういえば、最近何の脈絡もなく、西京漬けを食べさせられた気が――ハッ!! まさかあの白身魚!!」
「違うのじゃ!!」
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