第605話 逆異世界転生で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
なんやかんやと異世界を懐かしむダイコンと桜。
辛いこともあった。
楽しいこともあった。
それも帰還した今となっては良い思い出である。
そう、のど元過ぎればなんとやら。どんなにそれがトンチキな旅であったとしても、もう終わってしまったことなのである。
異世界でダイコンにされたことも。
旅の目的も何も知らされずオープンワールド的に世界に放り出されたことも。
全て、もう、終わってしまったから関係ないのである。
そう、それよりも優先して、彼らには考えなくてはならないことがあった――。
より具体的には、桜と加代には。
◇ ◇ ◇ ◇
「なんやて!? なのちゃんがこっちの世界についてきたやて!? それで話の流れでお前らが育てることになったやと!? どういうことや!? よつば〇!?」
「のじゃぁ。そんなホンワカ日常系の展開じゃないのじゃ」
「ほんでもってついて来たのはなのちゃんだけじゃないしな。ドラコにシュラトも、アリエスちゃんもだからな。そこが重要なんだよ」
俺たちは異世界に帰還した後、俺たちの身に起こったことをありのままダイコンに話した。あの冒険の続きという感じで、ダイコンに相談した。
当然、この件について、お前にも責任があるんだぞという調子で彼に話した。
というかぶっちゃけた話いっぱいいっぱいだったのだ。
「のじゃぁ。シュラトはぜんぜん働かないし、なのちゃんはあの外見だし、ドラコについてはモンスターなのじゃ。もう、どうしていいかというもので」
「親父と御袋が面倒見てくれてるが、まぁ限度ってものがある。俺たちで、こちらで彼らが生きていく方法を考えてやらないとなとなってなぁ」
まぁ、なのちゃんは別だ。
いくらモンスター娘だからと言って、あんな幼女を異世界に放り出すようなことは俺もできない。
彼女については俺が責任を持って育てる所存である。
もしくは、加代の持っている妖怪ネットワークを使って、生きれる場所を探してやるつもりだ。
しかしシュラトは別だ。
というかアイツが問題なのだ。
「シュラトの奴がな、これがまったくこっちに来てから引き籠ってしまっていて」
「……マジかァ」
「のじゃぁ。なんかこう、心に闇を抱えた感じの引き籠りかたなら、まだなんていうか我慢できるのだけれど、開き直った感じの引き籠りっぷりなのじゃ。勘弁ならないのじゃ」
異世界に行って引き籠るのもトレンドになって久しいが、引き籠り方がエグい。
あれだ、引き籠りつつ、なんやかんやと周りとコミュニケーション取っていればそれでいいのだけれど、あいつの場合は完全にダメな感じの引き籠りである。
昼間からゲーム。
人の金で散財。
ギャンブルこそしないけれど、稼いでも来ない。
そしてそれを悪びれもしない。
なのちゃんたちとまとめて面倒をみてもらっている実家も、奴の凶行に流石に我慢がボルケイノ気味。見かねて、彼の妹分のアリエスちゃんがWワークで頑張る始末に陥っているのである。
ぶっちゃけ。
「あそこまで開き直れるニート、おそ〇さん以外で初めて見たわ」
「のじゃ。
「話を聞く限り、そんな感じやなァ……。異世界ではあんなに真面目やったのに……」
異世界に転移して、それまでの人生と百八十度違う生き方をするというのもまた、昨今のトレンドだとは思う。
思うけれど。
けど、幾らなんでもあんまりじゃないだろうか。
「おまけに、どれだけぐーたらしてても、くっちゃねしてても、太る気配がないんだよ」
「相変わらず顔だけはいいのが腹立つのじゃ」
「完全にそこは私怨入ってない!? いや、そこは体質いうもんやで、言い出したらキリのない話や」
「ダイコン、シュラトに天誅を!!」
「のじゃぁ!! 天が下さぬなら、狐が下すのじゃ!!」
「分かった、分かったから。桜やんたちがそこまで追い詰められてるのはよく分かったから、落ち着いてやで。というか、加代ちゃんまたマニアックなネタ引っ張りだして来るなぁ。びっくりするでしかし」
マニアックなことも言いたくなるよ。
あいつのおかげで、俺ら実家で肩身が狭いフォックスフォックス。
そう、俺たちは早急にシュラトの異世界転生ライフについて、対処をする必要があったのだ。このまま、寝て食べてゲームして快適異世界生活とか、そういうのになられては困るのだ。
俺たちは奴の財布じゃないのだ。
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