第590話 内部構造が大事で九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 カタクリ〇はプリンではない。

 ジョークグッズなのだ。


 カップに入れてレンチンして、それで完成ではない。

 そこから更にいい感じのはめあいの穴を開けなければいけないという作業が発生するのだ。


 そう!!

 H6とかH7とかH8とか!!(公差)


「のじゃぁ。一部の金属加工業従事者しか分からんネタはやめるのじゃ」


「久しぶりに出たなお仕事ネタ。けど、本当にどうしようもないネタだなぁ」


 なんでこの辺りのはめあい公差が選ばれるのか。狙ってやったんじゃないのか。そんな疑問を感じずにはいられない、この業界に裸足で飛び込んだ作者であります。

 割とお仕事は順調です。とはいえ、才能は絶望的にない(不器用)ので、いつ肩を叩かれるかは分かりませんが。


 はたして加代ちゃんと作者、どっちがクビになるのが早いやら。


 ☆ 書籍化して、作家になれば何も問題ないのに!! カドカワさん、ほんとよろしくお願いします――!!


「いや、定職はちゃんと持つのじゃ」


「これからのご時世も何も、小説一本で食ってくのは昔から難しいんだよ。だいたい金持ちのボンボンとか実家が太い人が、周りの援助とか支援を受けつつ巧くやるのがこの手の常じゃん。貧乏人がどれだけ頑張っても限度はあるんだから。まずは最低限のラインをしっかりと固めていこうや」


 登場人物に諭される作者なのであった。

 うん、まずは生きなくちゃ話にならんしだものね。


◇ ◇ ◇ ◇


「えっ!? 棒が必要なんですか!?」


「サクッと剣で隙間を入れるだけじゃダメなのか!?」


 まるで料理漫画のキャラクターのようなリアクションをするシュラトたち。

 今の今まで、何を言ってもなしのつぶてというか、のれんに袖押しというか、反応が味気なかった彼らがはじめて食いついた瞬間であった。


 よくやったダイコンタロウ。

 もう止めることのできない魔神復活の流れを、ここでようやく押し留めることができた。


 あのまま魔神復活の儀式――という名のカタクリ〇を作る流れに舵を切っていたらと思うとぞっとする。


 俺たちは寸での所でこの世界が暗黒に堕ちるのを食い止めたのだ。


 そう、カタクリ〇の内部構造。

 それをどうこうするという、なんともシモい話によって。


 ただの筒では効果は薄い。

 やはり、考え抜かれた構造があってこそなのである。

 あの手のジョークグッズというものは。


 もちろん、こんにゃくも、カタクリ〇も、切れ目を入れて楽しむお手軽グッズではあるが――改良の余地はたくさんある。


 カタクリ〇職人としてのダイコンの矜持。

 そして機転が今回ばかりは世界を救った。


 そう言って過言ではないだろう。


「まぁ、普通に割り箸を突っ込んでもええ。けれどもやシリコン業界――いわゆるシリコンバレーは日進月歩。精巧細緻。その構造はナノ単位まで計算されとるんやで。そんなシリコンの代替品に、ただのカタクリ〇で対抗できると思うたか」


「くっ……我々では、シリコーンさまの現身を作ることは難しいというのか」


「てめぇダイコン。言うじゃねえか」


「あぁ、言わせてもらうで。ワイはこれでも、転生前はちょっとしたカタクリ〇職人として名を馳せてたんや。最高のカタクリ〇を求めて、ブログサイトを立ち上げたりしてな。そう誰が付けたか、上手いこと言うたもんや――カップパッドってな」


「カップパッド!!」


「よく分からんが、胸にずしりとくる言葉の響きだぜ!!」


 商標権的にずしりと来るブログ名だなおい。

 誰が付けたかもなにも自分で付けたんだろうがい、絶対それ。


 誰がうまいことを言えと。


 しかし、ダイコンの奴にそんな過去があったとはな。

 うん――。


「カップパッド師匠!! いや、カタクリ〇師匠!!」


「どうか我々に、DIYホールの極意を教えてください!! この通りです!!」


 順調に話が怪しくなってきたぞ。


 玄人の登場により止まったかと思われたカタクリ〇電造の儀。

 しかしながら、さながらこの話はあれ。料理漫画でいう所のを、三日待ってください的な感じの奴であった。


 ダイコンタロウというかヤマ――いや、よそう。


 これ以上、パロディにパロディを重ねるのはまずい。

 この作品は、まったりお仕事クビになる小説。もはやそういう展開が、最近めっきり少なくなったとはいえ、そこはぶれてはいけないのだ。


「カップ道は厳しい。一朝一夕に理想のカップが造れるとはゆめゆめ思わぬこと。無窮の鍛錬の果てに、やっと一つのカップができるのだ。その苦難に挑む覚悟はあるか、二人とも」


「えぇ!! カタクリ〇師匠!!」


「まかせろよ!! ここまで言われてやらなくっちゃ男がすたるってもんだぜ!!」


 男らしい返事をするシュラトたち。

 かくして、男たちの長く険しい求道ならぬ求穴の物語が幕を上げた。


「……のじゃぁ、かつてないほど下品な話なのじゃぁ」


「……うん、どうしてこうなったんだろうね」

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