第589話 大切なもので九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
黒騎士シュラトが求めていたカタクリの花。
彼がそれを求めた理由それは――。
「これぞ、魔神シリコーンさま復活に欠かせぬ伝説のアイテムカタクリの花!! よろこべエドワルド!! ついに我らが神がこの世界に顕現する日が来たのだ!!」
暗黒大陸に住まう彼らが崇める神、魔神シリコーンを復活させるためであった。
という訳で。
知らず知らずと世界の滅亡へと加担していた桜と加代ちゃん、そしてダイコン。
その真相を聞いて、彼らは顔を青ざめさせるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「……いやけど、依り代って。そんなカタクリで何ができるっていうんだよ」
「せやでシュラトやん!! それは所詮片栗粉――お料理にとろみをつけるだけのアイテムやで!! そんなジョークグッズの代わりなんて務まらへんがな!!」
全力ですっとぼける俺とダイコン。
知っている。俺たちは知っている。その粉で、どうやってジョークグッズを作るのか、その方法をよーく知っている。
しかし、あえてとぼける。
だってこれ以上世界の滅亡に関わりたくないから。
関わりたくないから、知らない体で押し通すことにしたのだ。
そう、この世界には電子レンジがない。
そして紙コップもない。
カタクリ〇は、電子レンジによる電磁加熱による水分の急速沸騰を利用したジョークグッズである。
電気の力が存在しない、この異世界では本来では作ることができない。
そう思っていた――。
「心配ない、雷魔法【チ〇チン】の準備は十分だ!!」
「キサラの奴も東の島国から紙でできた伝統食器――紙コップを仕入れている!! あとはペペロペの帰還を待って儀式を執り行うだけだな」
「……あかん」
「……もう、手詰まりや」
しかしあったのだ。
なんか電子レンジと同じ効果が得られそうな、そういう便利な魔法がこの世界にはあったのだ。しかも絶妙な卑猥な感じの魔法名だったのだ。
そして、紙コップも存在したのだ。
さらっとさりげなく赤い騎士が取り出したのだ。
赤い騎士が取り出したから、それも赤色なのだ。
そう、それはとても、インテリアとしてインスタ映えしそうな、地上波で放送しても問題ないようなグッドルックなデザインをしていた。
実にTENG〇だった。
「よーし!! 俄然やる気が湧いて来たぜ!! さっさとやっちまおうぜ、シュラト!!」
「あぁ、桜どのたちがいるのも何かの縁――我らの神の復活を見届けて貰おう!! いいよな桜どの!!」
「「よくねぇよ!!」のじゃ!!」
またたまそんなご冗談をと言う顔で、俺たちの拒否を受け流す黒騎士。
なんだよ硬いことを言うなよと、人のいい笑顔で受け流す赤い騎士。
こいつら揃いも揃って毒気がないのが輪をかけて性質が悪い。
きっと魔神の復活についても、深く考えていないのだろう。
どういうバックボーンがあるのか分からないけれど、きっとそこにはしょーもない理由しかないのだろう。
そして、今、そんなしょーもない理由とふんわりとした興味により、この世界は危機に瀕しているということなのだろう。
なんて、ばかばかしい世界だろうか。
「いや、待つんやシュラトやん。それに、エドワルドやん」
「あん、ダイコン?」
「おぉ、ダイコンくん。どうしたんだね、何か我々のプランに問題でもあるのか」
「問題ありのアリアリ、モハメ〇・アリやで。自分ら、カタクリ〇を作る上で、最も大切なものを忘れてるんちゃうか」
最も大切なもの、と、口ごもるシュラトとエドワルド。
その時、俺は気が付いた。
ダイコンタロウが言おうとしていることに。
作ったことがあるからよく分かった。
カタクリ〇の丈夫過ぎるほど丈夫な、その硬度に。
そう――。
「カップとカタクリだけでは不十分。本当に必要なんは――穴を作るための棒やで」
まるで熟練のカタクリ〇職人。
そんな感じで、ダイコンタロウは黒騎士と赤い騎士に言った。
まったくしまらない、トンチキなアドバイスを繰り出した。
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