第584話 仮面の下で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
赤くて仮面で金髪と来たらもうアレしかありませんがな。
そしてその仮面の下は美青年に決まってますがな。
「真実よりもよっぽど一つな展開やで!! 間違いあらへんがな!!」
とまぁ、自信満々の大根太郎でございますが。
はたして真実はいかに、と、珍しく引っ張ってみる作者なのでした。
まる。
「のじゃ、ネタ切れなのじゃ」
「行き当たりばったりもここに極まれりだからな。だいたい、仕事終わりに書いてる時点でお察しというものだよ」
苦しい実情を暴露しないでフォックスフォックス!!
◇ ◇ ◇ ◇
金髪の男が仮面を外す。
まぁ、某リアル志向戦争アニメだったならば、仮面の下には麗しい顔が待っているものである。中には父さんだったり兄さんだったりバレバレ仮面だったり例外もあるだろうが、とにかくそれが鉄板。宇宙世紀の理である。
ダイコンタロウの言ったことに疑問を感じることはなかった。
実際、そうくるんだろうなと俺も感じていた。
しかし――。
仮面の下から現れたのは俺たちが予想してもいないものだった。
「おっ、おわぁっ!? なんだ、その怖い顔!?」
「のじゃ!! 明らかに人じゃない顔なのじゃ!! これは――向こうの世界で魑魅魍魎の類に呪われた時に出る症状なのじゃ!! いや、魑魅魍魎レベルだったら、こんなことにはならないのじゃ!!」
仮面の下から出てきたのは美醜をどうこう語る以前の問題。
人間の顔とは思えないほど赤く、そして憤怒に満ちたものであった。顔面にある筋肉の筋という筋が分かるくらいに盛り上がり、血管が今にも破裂しそうなくらいに脈打っている。おおよそ、それは人ということはできない有様だった。
だが、その恐ろしい表情の中に、確かな人間性がある。
憤怒の表情を浮かべる赤い騎士は、俺たちにその恐ろしい表情とはまったく違う、温かい感情を向けてきたのだった。
「驚いたか。まぁ、こんな形なんでな。ちょっとばかし隠させてもらってるって訳よ。見た人間を驚かせちまう」
「のじゃぁ。そりゃ、そんな顔を見せられれば、誰だって驚くのじゃ」
「というか、いったいどうしてそんなことに」
「大陸統一のためにしゃかりきになりすぎた――っていうよりも、鬼の力に頼り過ぎたんだな。王家に伝わる守護の鬼の力を使い続けているうちにこのザマさ。呪いが体から抜けなくなっちまった」
うむ。
分からん、さっぱりと分からん。
まず、鬼の力とはなんぞやという所からして分からん。この世界ではポピュラーな能力なのかもしれないが、向こうの世界ではとんと聞かない話である。
鬼の力を使い過ぎて鬼になり果てるなんてそんな話、いまどき漫画だって聞かないっての――。
「地獄先〇ぬ~〇~やな」
「地獄先〇ぬ~〇~なのじゃ」
「よく覚えてたなお前ら。俺も一瞬思ったよ、地獄先〇ぬ~〇~かなって」
「そんな驚くことでもないやん。割とポピュラーな感じの話やん。時代を越えて不変な感じのキャラ設定やん」
外しておいてそういうこと言うかねダイコン。
お前の予想じゃ、その下はキャス〇ルな兄さんだったんじゃないのか。
まぁいい。
俺たちの前で再び仮面をかぶり直す赤い騎士。
彼は口元だけで笑う。その微笑みが、強がりというか、やせがまんというか、なんだか無理して作ったように見えて、少し胸が疼いた。
「つう訳だ。見苦しいものをみせちまったな。周りに余計な心配をかけないように、いつもはこうしてるんだ。なんで、気を悪くしたらすまん」
「いや、そりゃ隠すだろう。いや、いや、変な意味じゃなくて」
「のじゃぁ。お気遣いどうもなのじゃ。それより、大変じゃないのじゃ?」
「なぁに、大事の前の小事って奴さ。俺の身体がどうなろうが、別に構わねえ。暗黒大陸に平和が訪れてくれるなら、それで俺は構わねえのさ」
なんだこの男。
オラつく系男子と思わせて、めちゃくちゃ好青年じゃないか。
非の打ち所がないいい子じゃないか。
爽やかに笑う金髪仮面の紅騎士。
これ以上イケメンキャラはノーサンキューとか思っていた俺だったが、そのあまりの爽やか好青年ぶりに、思わず毒気を抜かれてしまうのであった。
やれやれ。
カッコいい男は、どこへ行ってもカッコいいものだな。
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