第583話 赤くて仮面はあかんで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
〇ヴァンゲリオン量産機と戦うのは赤い奴の役目。
そして、赤は噛ませ犬の色。
「中央大陸連邦の観光客か? はぐれちまったのか、だったら安心しな。俺が責任を持って、アンタらを旅の連中の所まで連れていってやるよ!!」
現れた深紅の騎士。
しかしながら、桜と加代は嫌な予感に肌を震わせるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「中央大陸からの観光とはよく考えたよな。年中戦争やってて、休まらない土地だから亡命者なんてまたぞろいやがる。そんな奴らを安心安全を謳って連れてくるんだから、そりゃ金になるわ。ほんと、ゴブリンティウスの奴は頭いいよな」
「……は、はぁ」
「のじゃぁ。ゴブリンさんがこのツアーを発案したのじゃ?」
「おう、うちの自慢の参謀よ。ペペロペの奴も頼りになるが、個人的にはゴブリンティウスの方が信頼できるな。いぶし銀って感じがしてよう。ただのゴブリンの癖してかっこいいのよ。あぁいうのも男としては憧れるよなぁ」
深紅の騎士がそう言って闊達に笑う。
仮面で顔の上半分を隠している。なんというか、いかにもアレのオマージュを感じさせる真っ赤な男。
しかし、話してみるとこれが意外にさっぱりとした奴だった。
オラつく感じの狂犬キャラってのも、赤い奴のテンプレートだったりするんだけれど、どうやらそこは源流に忠実らしい。とはいえ、謀略家かと言われれば、俺たちを見捨てられずに助ける辺りからもそんな感じはしない。
「お前も暗黒大陸から疎開した奴の子孫か何かか。可哀そうにな。まっ、今に見ていてくれよ。俺たちがよう、暗黒大陸を統一したからには、もうこれまでみたいなことにはならない。中央大陸に負けじと劣らない、立派な国にしてみせるからさ」
「……のじゃ」
「なんだこれ、めっちゃいい奴やんけ。どうなってるんだダイコン」
「分からん。ガンダ〇歴ウン年のワイにも、この展開は予想外やで。なんやこの爽やかな赤い人は。こんなキラキラした感じに夢語る奴、赤ポジとちゃうやろ」
お前もそう思うかダイコン。
俺もそう思う。
だいたい赤いのは暗くて辛い過去を背負っていなくてはならないのだ。
物語のキーマンとして、確固たるカリスマを持っていなければいけないのだ。それは、人の良い兄ちゃん的なカリスマではなく、どちらかといえば何を考えているのか分からないミステリアスな感じのカリスマなのだ。
こいつにはそういう部分が少しもない。
とんだ見掛け倒しの赤キャラである。
仮面まで被っているというのに。
これでは――。
「ただのかま」
「のじゃ!! まだそうと決まった訳じゃないのじゃ!! 何かこう、戦闘になるとちょっと性格が変わるような!! そういうのがあるのかもしれないのじゃ!!」
「そうだ桜やん。まだ結論を出す時ではない。しばらく様子を見よう」
しばらく様子を見ようって何がだよダイコン。
もう俺ら、この男に送迎されて、観光センターに戻されそうになっているってえの。せっかくオークの群れの動揺に紛れて脱出したというのに、もう強制送還されそうになっているっていうの。
赤い騎士はそれはもう親切だった。
大丈夫か、ちゃんと観光センターまで戻れるか、モンスターとか大丈夫か、しかたねぇなぁ、って自然な流れで俺たちの護衛を引き受けてくれるいい奴だった。
たぶんすごく育ちがいいんだろう。
人に親切にすることが、自然とできるそういうタイプと見た。
これもまたオマージュか、それともそういう意図なのか、赤い騎士の髪はブロンドだ。しかも、光もないのに輝くようなきれいなものだった。
さぞ、その仮面の下も美男子なことに違いない。
はぁ――。
「まだ護衛されるなら、さっきのおっさんの方がよかったなぁ」
「のじゃ。どんだけ絵面を気にしてるのじゃ。仮面をかぶってるから、美男子とかそういうのは別に気にならないのじゃ」
「せやで桜やん、そんなん気にしても仕方あらへんやんけ」
「せやかて、加代さん、ダイコン」
実際、いかにも美男子ですよオーラをこれでもかと発してくるんだぜ。
仮面なんか付けちゃってさ。
余計にそれで際立つっての。
チラリズムじゃないけれど、隠されれば隠されるほど、そういう風に見えるものじゃないのよ。あぁ、やだやだ、仮面の美男子とかほんとそんなテンプレ勘弁。
「……おぁ? なんださっきから、俺の顔ばっかり見て?」
「いや、まぁ、その、親切にしてくれるなぁと」
「……ふぅん」
俺の視線に気が付いた赤い騎士。
テキトーなことを言って誤魔化したが、いかんせん訝しい視線が俺に突き刺さる。
どうやらただの狂犬キャラではないようだが鼻は利くようだ。
「違うな。そういう理由で俺をみてたんじゃねえ」
「げっ」
「バレたのじゃ」
「分かりやすい奴やな桜やん。そんなんでよう社会で生きてけたな」
「ははっ、図星って感じだ。安心しろよ。別にペペロペみたいに魔法を使った訳じゃないさ。単に俺がこういうのに慣れっこってだけさ」
慣れっことは。
つまり、そういう視線で見られることがあるということだろうか。
そう思っている俺の前で、彼はおもむろに仮面に手をかけた。
思わせぶりにかけている仮面。
きっと、簡単に外してはいけない理由があるのかと思いきや、彼はそれを案外おざなりに外してみせた。
はたしてそこから出てきたのは――。
「……えっ?」
「……のじゃ!?」
「……あ、これ、知ってるで!! 次の更新に続くヒキって奴や!! 思わせぶっておいて、実はたいしたことあらへん、そんな感じのあれやで!! たぶん!!」
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