第554話 エルフの中のエルフで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
エルフリアン柔術炸裂!!
哀れ、丸太は持ったかで殴りかかった桜は返り討ち!!
エルフリアン柔術はどんな卑劣な攻撃にも負けないのだ!!
武器の有無さえ覆す、異世界最強の格闘技!!
か弱いエルフが大自然と戦うために編み出した秘奥!!
そうそれがエルフリアン柔術!!
たたえよ、エルフリアン柔術を!!
そして、はじめようエルフリアン柔術を!!
「エルフリアン柔術は君を待っている!!」
「「いったい何の宣伝だよ!!」なのじゃ!!」
あっちの作品でもぶっちぎりでヤベー奴。エルフリアン柔術の使い手であるキングエルフは、こっちでもまた無茶苦茶をかましてくれるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
「私の名はキングエルフ。エルフの中のエルフにして、このエルフの森に住まうエルフたちの長。つまるところ、エルフの村の村長をしている者だ」
「……嘘だろおい。どこからどう見てもただの変態じゃないか」
「なんと? この私のいったいどこが変態だというんだ? 見てくれ、この見事に鍛えられた臀部が、この私が清廉潔白、心身ともに健康で優良なエルフであると証明してくれているじゃないか」
そういうなり、尻を引き締め褌を吊り上げ、プリッとキメ顔ならぬキメ尻をしてみせるキングエルフ。
うん、その尻が信用ならないんだよ。
顔面認証ならぬプリケツ認証。尻を見て人を信じろなんて、おかしな話があったものだ。そして、なんでそんな無駄にぷりぷりしているんだ、お前の尻は。
どうかしている。狂気の沙汰としか思えない。
俺はまだ痛む頭を押さえる。
現実を信じられない俺に、のじゃのじゃと加代が近づく。
「村長さんの言っていることは本当なのじゃ。彼は本当に、このエルフの森に住んでいるエルフたちのリーダー的存在なのじゃ」
「リーダー的存在と来たか。まるで九十年代ジャンプ的展開のオンパレードよな」
「のじゃぁ、本当なのじゃ。ギャグマンガの登場人物みたいな形をしておるが、頼りになる人なのじゃ。それは本当なのじゃ」
「せやで桜やん。ここまで桜やんを運んでくれたのも、何を隠そうこのキングエルフやんなんやで」
いや、そう言われても。
その前に、俺を一本背負いして倒したのも、たぶんこのエルフなんだよな。
なんというか、流れ的に言って。
だとしたら完全にこいつが悪いだけの話じゃないか。
なに、勝手に人を一本背負いしておいて、勝手にぷりぷりの尻を見せながら茂みからでてきておいて、それでいい人ってそれはちょっと虫が良すぎない。
なにより――。
「こんなおまぬけキャラに負けるとか、俺、幾ら貧弱異世界転移でも嫌なんですけれど」
認めたくなった。
こんなど変態に、異世界に来てまで負けたという、そんな悲しい現実を。
まだゴブリンやドラゴンに負けるならそれは許せる。
だって、アイツ等はファンタジー世界の住人だから。
オーガーや、オーク、ダークエルフなんかでも、悔しいけど許しちゃう。
けれどエルフはノーだ。
しかも、こんな褌を穿いたエルフにやられるとか、そんなのは嫌だ。
こんなの、こんなのって――。
「みじめ以外の何物でもないよ!!」
あまりに惨めな展開過ぎる。
どうせ負けるなら、もっとこう、強いライバルキャラクター的な感じの奴がよかった。
褌のエルフ男って。
そんなん、どうやっても、流行らん感じのキャラクターやんけ。
キャラクターメイクでファンブルしまくった、ぶっ壊れキャラやんけ。
「すまない。どうやら、私の一本背負いが思いのほかトラウマになってしまったようだな」
「一本背負いがどうこうの前に、四つん這いで茂みの中からふんどしエルフが登場した瞬間にトラウマですがな」
「許してくれとは言わない。しかし、どうか、この尻を信じてやってくれないだろうか。このけがれなき、私のプリめく尻を信じてやってくれないだろうか」
「だから!! それがトラウマだって言ってんだろ!! はたくぞ!!」
まーたこりゃ濃いキャラが出てきてしまったよ。
どうすんのこの話。というか、こんな濃いキャラばっかり出して、ちゃんと話が回るの。むしろこんな頭のねじがどっかに飛んで行ったような奴らばかりで、成立する話があるのだとしたら、そらもう大変だって話ですよ。
頼むから、まともなエルフ出てきてくれ。
トンチキファンタジーはもう勘弁勘弁フォックス。
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