disparity ~アナタと私の関係~

hyo-

第1話 間接的にフラれました。

社内の喫煙所での会話が漏れ聞こえ、私ははたと足を止める。


何故なら会話の中で自分の名前が出てきたのが聞こえてきたからだ。


「佐田?俺的には別にアリだけど?」


その言葉に私は胸が弾んだ。


私が入社当時から憧れてた長谷山友哉はせやまともや先輩から発せられた言葉だったから。


俺的にはアリ、俺的にはアリ、俺的にはアリ……。


その言葉が頭の中でリフレインする。


自慢じゃないが私はモテない。


顔も身長もスタイルも微妙で地味。


幼少から今に至るまで「いたの?」なんて言葉はよく言われてた。


長谷山先輩は入社当時から、地味な私にも気を配ってくれたり、からかってきたりして、何かと気にかけてくれてた。


ぶっきらぼうだけど優しくて、仕事も出来る。女子にも男子にも大人気の男子社員だった。


そんな長谷山先輩の口から、私が「アリ」?


そんな事聞いて嬉しくないわけがない!


そもそも喫煙所で、何故私みたいな地味で話題性もない社員の話題が始まったのかも謎だけど。


長谷山先輩の言葉に、他の社員からは不満のようなどよめきが起きる。


「いやいやいやいや……ナイでしょ、せんぱ~い。佐田ですよ?仕事はそこそこ出来るけど、地味で仏頂面で可愛げもない、あの、佐田ですよ?」


やたらと私の粗を強調するのは、同期で仕事も出来ないくせに口だけで世渡りしてる一之瀬保いちのせたもつだ。


長谷山先輩は一之瀬の言葉に「そうか?あれでいて結構可愛いとこあるよ?」と返した。


その言葉に再び喫煙所の中でどよめきが起こる。


「長谷山先輩ストライクゾーン広すぎ!」


「あきらかにつまんなそうな女じゃないッスか~」


その場にいる男子社員から「ナイ」の嵐……。


解ってはいたし、ここは会社で、仕事をする所で男に媚びる場所じゃないから、なんて自分に言い訳をしてた。


女としてではなく、人間としての自分まで否定されてる気分だった。


それでもここを立ち去れないのは長谷山先輩が私の味方をしてくれてるから。


長谷山先輩がどこまで私の味方をしてくれるのか怖いけど聞きたかった。


「あいつってどう見ても処女っぽそうだし!」


その言葉に同意の声が飛び交って、長谷山先輩がポツリと言った。


「あー……処女はちょっとムリ。めんどくせえもん」


低めのトーンが私の胸を突き刺した。


「先輩、それマジなトーンじゃないっスか~!」そう言って一之瀬が頭の悪い笑い声を響かせた。


私は足元が凍りついたように動けなかった。



佐田麻衣子、28歳、地味女子、処女。

告白もしてないのに、間接的にフラれました。


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