第2話
やっぱり、勘違いではなかった。おばさんはフィーチャーフォンをいじりながら歩いていて、前を見ていない。やっぱり、おばさんのことをつい見てしまう。目をそらして、反対側を見ると、さっきの女の子がこっちに歩いてくるのが見えた。その子も、フィーチャーフォンを持っている。一度にいろんなことがありすぎて、頭が混乱してきた。
その女の子に近づく。「ねえ」と話しかけると、女の子は肩をびくっとさせて俺を見た。立ち止まる。怪訝な顔をしている。
「さっき会ったよね」
女の子は黙って歩き出した。もう、俺のことは頭から消えているみたいだった。携帯をいじっている。我に返ってみると、自分の行動がただのナンパにしか思えなくて恥ずかしくなる。今頃、きもい男にナンパされた、とでもSNSに書いているのかもしれない。
胸の痛みを引きずりながら、サチの家に向かって歩き出した。さっきのことが気になる。あの男たちはもう、家に入っているのだろうか。うまくいけば、サチの笑顔を増やせるかもしれない。門の横に備え付けられているインターホンを押した。「はい」とレイの声が返ってくる。名乗った。次の瞬間、世界は一変していた。
右側に顔を向ける。フィーチャーフォンをいじるおばさんが歩いてくる。左側に目を向ける。少しして、ミニスカートの女の子が歩いてきた。時間が巻き戻っている。二回とも、レイに話しかけたところで時間が巻き戻った。レイに話しかけると、進まないみたいだ。気を付けよう。でも、どうすればいい。なにも進んでいないだけじゃなくて、ほとんどなにもわかっていない。
家に向かって歩き出した。自分の家で情報を集めよう。門を開けて、玄関を開ける。そこには、お母さんがいた。次の瞬間、世界は一変していた。
また、家の前に戻っている。今度はレイに話しかけていない。それなのに、時間が巻き戻った。時間が巻き戻る条件は、レイに話しかけることじゃないみたいだ。それを含んだなにかか。それとも、それは見当外れなのか。
レイには話しかけない。家にも入らない。家に入ることができれば、少しは情報収集ができそうなのに。なす術がなくて、歩き出した。ミニスカートの女の子とすれ違う。フィーチャーフォンをいじっていて、俺のほうには見向きもしない。やっぱり、俺が話しかけたことは無かったことになっているみたいだ。
大通りに出る。スマホをいじっている人を見かけた。なんだか安心して、見てしまう。向こうも俺に気づいた。その女の子は目を見開いている。俺のほうに近づいてくる。
「あなたも光に連れてこられたの?」
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