天上の歯車
@saika4869
プロローグ
___僕は死んだ。
交通事故だった。心残りは無い。
しいて言うなら、もう少し特徴のある人生を歩んでみたかった、ということだけ。
学校でも特に目立つようなこともなく、僕は平凡だった。成績も並。運動は寧ろできない方。容姿が整っているわけでもなく、かといって不細工というわけでもない。
親に期待されているわけでもなく、失望されているわけでもない。
至って平凡な人生を歩み、事故で死亡。
…そういえば、事故死というのは結構な特徴だったりするのだろうか。
まだ高校生だったし。
…いや、そんなことはどうでもいいか。
「そうだね、そんなことはどうだっていい!特に君の場合はね」
急に聞こえた声にギョッとしつつ振り返る。そこには、真っ白の服を着た結構整った顔立ちの男がいた。20歳前半だろうか…結構若い。
っていうか、何コイツ…もしかして神様とか?
「そうだけど?っていうか、君無口だねー。ちょっとは喋れば?」
余計なお世話である。
「僕に何か用ですか?あー…転生の手続きとか?」
「…君、変なトコは頭良いんだね。うん、そうだよ。さっさと《歯車》回しちゃって?僕も忙しいんだからさ」
凄い適当だな、この人。明らかに面倒くさがってるし。
「《歯車》って何…ってか何処にあるんですか、それ」
「え、君のすぐ後ろにあるでしょ。でっかい歯車が」
何処だよ、と思いつつ振り返る。そこには大きな歯車のオブジェがあった。さっきまで無かった筈なのに、何故。
「ほら、回して?君の転生先がそれで決まる。ちなみに、時計回りね」
神様に言われるがままに立ち上がり、フラフラと歯車へ近づく。軽い足取りで近づくと、それはさっき見たより大きく見えた。年季の入っていそうなその歯車はギシギシと音をたてつつ回っている。
自然な手つきで動いている歯車に手をつくと、歯車はギシと軋んでからピタリと止まる。ヒュウ、と後ろから口笛が聞こえた。神様も口笛とか吹くんだな、と思いつつ手に力を入れる。
「…回れ」
静かな空間を打ち破るように呟くと、ギシリと音を立てて歯車は回った。
___左側に。
「えっ⁉ちょっと待って、稲嶺君!手、離して!」
神様が焦りを剥き出しにして言う。
が、遅かった。
___カチリ。
歯車が回る。
ギシギシと音を立てていた歯車は、新品のような音を立てた。
まるで時を巻き戻すように、歯車は回る。
「稲嶺君!」
僕は意識を失い、その場に倒れる。
最後に見えたのは、神様と、水色のワンピースを着た少女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます