きみに決めた!
「そういえば、みんなってなんで今の楽器を選んだの?」
部活も終わって下校中に、そんな話題を急に振ったのは
「おれは単純にかっこよかったから……かな。そういう小虎は?」
真っ先に答えたのは
そして言いだしっぺの小虎に話が戻る。
「おれは『山の音楽家』聞いておもしろそうな楽器だなーって思ったからかな」
「山の音楽家?」
「『楽器紹介のための山の音楽家』って曲があって、その名の通り、山の音楽家に合わせて楽器ごとにいろんな曲を紹介していくの。ホルンは『木星』で、ユーフォは『メヌエット』とか」
他の奴らに合わせてふーんと呟く。そんな曲があるのか。部活紹介の時とか使えそうじゃね?
「
「自分? 自分はねっ、小虎くんと一緒でおもしろそうな楽器だなって思ったから! スライドがかっこいい!」
まあある意味おもしろい楽器ではあるよな、トロンボーンって。スライドのおかげでビブラートもグリッサンドもやりたい放題だし。先輩に教えてもらった時、おもしろくてやりまくったのを覚えてる。
「じゃあ
「オレはもともとオーボエに興味あったんだよね。『白鳥の湖』を聞いてさらに興味を持った感じかな」
余談だけど、オーボエが吹奏楽で使われる楽器だって知ったのは高校に入ってからだった。なぜなら中学ん時は小編成だったからな。
「次は順番的に
新宮の隣をしかめっ面して半歩後ろを歩いていた狗井が、急に名前を呼ばれてびくっと肩を震わせる。分かる、分かるぞ、前言ってたもんな、新宮の隣はなるべく歩きたくないって。だって外国人だからか同性のおれから見てもかっこいいし、何より腰の位置が尋常じゃない。脚の長さやばい。
「……
ぼそっと呟かれた台詞に、みんながあーとか言ったり頷いたりする。うん、あれはすげーよな。身長は関係ないけど、見学に行った時ちっちゃくてびっくりした。あの身長であんなドラム叩くのかと思うと。
ちなみにおれもパーカスってかドラムってすげぇなって思ったことはあるけど、おれには無理そうだと思ってはなからあきらめてた。前に狗井が「俺でもできたんだからお前にもできる」とか言ってたけど絶対無理。
「んじゃ、最後はうららだな」
「だからうららじゃなくてううらだっつーの」
「うららくんは中学ではトロンボーンだったんだっけ」
「そそ」
「ごっ、ごめんねうららくん……」
成子がめちゃくちゃ申し訳なさそうな顔してるけど、うららじゃなくてううらな、ううら。ああもう、いちいち訂正するのもめんどくせぇ。
「でもまあ、フルートも中学ん時憧れだったからな。なんだっけ、あれあれ」
「どれだよ」
「それのソロがすごかったんだよな」
曲名が思い出せなくて、思い出せる範囲で「た」と「ら」で歌ってみる。……音痴じゃないといいけど。
「ああ、『君の瞳に恋してる』?」
「きみひとか」
「そう、それだ」
さすが小虎と梓。そう、おれが憧れたあれは、「君の瞳に恋してる」のフルートソロだった。鳩村先輩に頼んだら吹いてくれないかな、なんつって。
「で、オーディションで落ちたわけ?」
「ちげーよ。女子ばっかだったし希望してんのも女子ばっかだったからペットいって、そんでペットで落ちてボーンになったんだよ」
さっきユーフォが云々言ってたけど、おれが一番最初に担当した楽器はトロンボーンだったりする。でまあ、いろいろあってユーフォになったというわけだ。ちなみに歴で言うとユーフォのほうが少し長い。……けど、
「そういう梓はよくペットになったよな」
「おれの場合は小学校からやってる奴が多くて、たまたまその中にトランペットがいなかっただけだよ」
「それもすごいね。ホルンは希望者いなくてすぐになれたからなー」
「二人は中学ん時からやってるからいいけど、おれは高校でいきなりフルートに左遷されたからまだまだ頑張らないとな……」
「……俺も」
「でもみんな、今の楽器、好きでしょ?」
まあね、まあな。新宮以外の全員のハモった声に、今度は新宮も入れて全員で笑った。
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