第二章 第二話
夜になって。
夜間
「誰だ〜?」
エイラが声をかけると、魔法陣は
「あれ、芳佳ちゃん?」
サーニャはそこにいたのが芳佳であることに気がつく。
「宮藤か? 何やってんだ?」
「サーニャちゃん、エイラさん!? あ、あわわわわわわっ!」
二人に見つかった芳佳は、
「へ〜、箒で訓練か〜、そういえば、私の家の近所にも、箒で飛ぶってウィッチがいたなあ」
芳佳から秘密の訓練をしていたことを聞いて、エイラは故郷でのことを
ついでに、あまり懐かしくないことも思い出したが、それは言わない。
「芳佳ちゃん、どうしてそんなことをするの?」
様子がいつもと違うことを感じ取ったサーニャが、静かに
「……」
芳佳はそれには直接答えず、逆に質問する。
「あのね……。サーニャちゃんやエイラさんは、急に飛べなくなったことってある?」
「……芳佳ちゃん、飛べなくなったの?」
サーニャは
「え、そうなのか、宮藤?」
このところの
「ううん、飛べない訳じゃないけど……」
口ごもる芳佳。
「なんだ、びっくりさせんなよ」
ホッとするエイラは、ふと、
「誰だ!」
「きゃっ!」
ガゴ〜ン!
「たたたたっ……いきなり何なさるんですの!?」
暗がりからバケツを手に現れたのはペリーヌ。
「ペリーヌさん!」
「べ、別に何でもありませんわよ。ちょっとトイレに……」
ペリーヌはシラを切ろうとするが。
「たんこぶ……」
サーニャが指さした。
「えっ!」
思わず手をやると、確かにそこには大きなコブが……。
「あははははははははははっ!」
大笑いするエイラ。
「あなたのせいでしょおおおおおっ!」
ペリーヌの
(あれ、
ペリーヌの頭に手をかざし、
「お〜、治った治った」
「魔法力は
と、エイラとサーニャ。
「よかったな〜、宮藤!」
「あなたたち、人の頭で実験しないでくださる!?」
親指を立てて見せるエイラに、ペリーヌは不服そうな表情を向ける。
「……じゃあ、何で
芳佳は
「何でだろうね……。ちょっと休んだ方がいいのかも」
「そうそう、きっと
サーニャとエイラはそう言葉をかけ、ちょっと
「あなたもさっさと寝なさい」
ペリーヌもこれ以上何もしてやれない自分に腹立たしさを覚えながら、ひとりで先に部屋へと向かう。
「……」
こうして周囲から
(行ける! 普通に飛べる!)
そう思い、さらに魔法力を高める芳佳。
「飛べ!」
だが。
次の
バッ!
箒の
「そんなあ」
座り込む芳佳。
「どうして……どうして飛べないの? こんなんじゃ、
「……」
そんな芳佳の
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃん」
「箒、
静かな波の音。
「きれいだね、アドリア海」
「……」
「前にもこうやって、二人で海を見たことあるよね? 覚えてる?」
あの時、
今度は立場が逆だ。
「うん」
俯いたままだった芳佳の首が、
「箒、
「うん。……ありがとう」
二人はそれ以上、言葉を
* * *
「あの!」
次の朝。
エンジンテストの
「あの! ……すけど……って……すか!」
「リーネ、どうした!?」
マーリンエンジンの
「……から……のこと……すけど……は……あるんで……!」
一生
「も〜、しょうがないな〜」
見かねたルッキーニが、
「ポチッとな」
シュウウウウウウ……。
格納庫は
「何すんだよ、ルッキーニ」
シャーリーは顔をしかめるが、これで何とか会話ができる。
「で、何か用なのか?
リーネを見るシャーリー。
「ちょ、ちょっと待ってください。こ、呼吸が……」
リーネは
「
ようやく息を整えたリーネの質問に、シャーリーは
「例えば、の話なんですけど?」
「……今のストライカーじゃ、ないなあ」
少し考えてから、シャーリーは答える。
「そ、そうですか……」
「壊れる前にリミッターが働いて、ストライカーに流れ込む魔法力がシャットダウンされるシステムになってるんだ」
「リミッター!」
ハッとするリーネ。
「
シャーリーは、リーネが魔導エンジンに興味を持ったのかと思い、ちょっと
「あ、っと、今はいいです! もう少し、自分で調べてみます!」
リーネはペコリと頭を下げると、クルッと背を向けて、トトトッと
相変わらず、カタツムリにも負けそうなほどの足の
「……へんなの」
ルッキーニは首を
「なるほどね、そういうことか?」
一方のシャーリーは、
「そゆことって?」
「いや、何でもない」
シャーリーは首を
「せっかく、親友が必死になって真実を
* * *
朝を
「連合軍司令部によると、明日にはロマーニャ地域の戦力強化のため、
「いよいよ到着するか」
「えっ、大和」
と、芳佳。
「芳佳ちゃん、知ってるの?」
「うん、扶桑の港で見たことあるの。ものすごく大きいんだよ」
芳佳はリーネに説明する。
「へえ〜」
リーネが
「はい。……ええっ、大和で事故!?」
「何だと!」
「!」
息を
「救助
一同を
「よし、すぐに二式
坂本は従兵の
「私に行かせてください! 戦闘は無理でも、
芳佳が立ち上がった。
「私も行きます! 包帯ぐらいなら巻けます!」
続いてリーネも。
「宮藤さん、リーネさん……」
包帯を巻く人員なら、大和でも事欠かないはずでしょうに。
心の中で
「言うと思った」
「ふっ」
ペリーヌとバルクホルンも、困った
「その方が、飛行艇よりも
坂本がミーナの顔を見た。
「分かりました、宮藤さんとリーネさん、大至急大和に向かってください!」
「
二人は
「芳佳ちゃん、
「う、うん」
基地から
芳佳のストライカーは不安定で、どうしても足並みが
やがて、扶桑を代表する大型戦艦、大和の姿が洋上に見えてくる。
「大和だ!」
「大っきい!」
芳佳に大きいとは言われたが、これほどのものとはリーネは思っていなかった。
芳佳とリーネは、その大和の後
そのまま、臨時の医務室になっているガンルームに案内される二人。
室内は重傷者で
「一番の
「ひどい」
リーネは思わず目を
「分かりました」
見る見る傷口が
「傷口が」
目を見張る医療助手。
「よし、塞がった。リーネちゃん、包帯を」
芳佳は親友を
「はい」
リーネは慣れない手つきで包帯を巻いた。
「次の人は?」
「は、はい、こっちです」
別の重傷者のところへ移動しながら、医療助手は思わず
「……すごい……これが
そんな声も、今の芳佳には聞こえない。
治癒魔法に専念しているのだ。
芳佳は次から次へと治療をしてゆく。
その額に
「芳佳ちゃん、大丈夫? もう10人以上治療しているけど?」
「うん、全然平気。まだまだ大丈夫だよ。……はい、これでよしっと」
(やっぱり)
リーネは確信した。
(芳佳ちゃんの魔法力、弱くなんかなってない。前よりもずっと強くなってるんだ……)
「次の人は?」
芳佳は助手を振り返る。
「いません。今のが最後の負傷者です」
「最後?」
と、リーネ。
「はい、お二人のお
「よかったね、芳佳ちゃん」
「うん!」
久し
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます