エピローグ、それともプロローグ?

エピローグ、それともプロローグ?


 帰国からすでにもう一か月。


 芳佳は母と祖母のもと、しんりようじよほうしゆぎようはげんでいた。

 だが、今はちょっときゆうけい中。

 この間、ルッキーニから来た手紙の返事を書いているところだ。

 ふと、横に目をやると、父が、まだあどけなさの残る坂本といつしよに収まっている写真がある。


 あの初夏の日。

 とつぜん、ブリタニアから届いた手紙にどうふうされていた写真だ。


「何もかも、この手紙から始まったんだよね」


 写真を見つめ、なつかしそうに呟く芳佳。

 と、そこに。


「芳佳ちゃん、芳佳ちゃん!」


 げんかんの方から声がした。


「みっちゃん! どうしたの!?」


 出てみると、そこには何かをきしめ、泣きそうな顔をしているみっちゃんの姿があった。

 その手の中を見てみると、メジロだろうか、ひんの小鳥がピクピクとふるえている。

 たぶん、ねこか野良犬におそわれたのだろう。


「うん。だいじよう


 芳佳はみっちゃんを安心させるようにそう言うと、魔力を発動させる。

 ピョンと飛び出る、耳と尻尾しつぽ

 その手にそっと小鳥を乗せ、芳佳は治癒魔法をかけた。

 暖かな光が小鳥を包み込む。


(少しは……ちゃんと使えるようになったよ、お父さん)


 微笑ほほえみ、手を高くかかげると、元気を取りもどした小鳥は、芳佳の手をはなれ、太陽に吸い込まれるように飛び立ってゆく。


「わぁ。……よかったね、みっちゃん」


「うん、ありがとう、芳佳ちゃん」


 と、喜び合う二人。

 しかし。


「……あれ?」


 何かが、キラリと空でかがやいたかと思うと……。


 ブ〜ン!

 グワッシャ〜ン!


 二人の目の前の、雑木林についらくした。


「きゃあ!」


 身をすくませる芳佳とみっちゃん。


「…………?」


 おそるおそる顔を上げると、何かがしげみにもれてうごめいている。


「あれって?」


 あし

 それも、ストライカーをいた、女の子の脚だ。


「うう〜ん」


 声がした。


「……痛〜い」


 近づいて、のぞき込む芳佳たち。


「……ウィッチ!?」


 まぎれもなくそこにいたのは、扶桑陸軍の魔女。

 それが、まっ逆さまに茂みにっ込み、脚を上に突き出してもがいているのだ。


「きゃっ!」


 芳佳たちの声におどろき、身体からだを起こすウィッチ。


「あ、あの私、扶桑皇国陸軍飛行第47中隊あまであります!」


 メガネに長いくろかみ

 ドジっ子のオーラをただよわせる少女は名乗った。


「こ、こんにちは」


 芳佳もとりあえず、あいさつを返す。


「え、えっと、宮藤芳佳さんは……」


 天姫はキョロキョロとあたりをわたした。


「は、はい、私ですけど……」


(私だってこんなにはひどい墜落はしたことない……よね、たぶん)


 と、思いながらも芳佳は答える。


「はあ〜、良かった〜!」


 天姫はあんのため息をつくと、『よしかへ』とあてきされた手紙を差し出した。


「えっ?」


 まどう芳佳。


「宮藤博士よりお手紙です」


「え、えええ〜!」


 青い扶桑の空に、芳佳のきようがくの声がひびき渡った。




                    終わり?  

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