第一章 東から来た善き魔女

第一章 第一話


 深くあおい、ブリタニアの空。

 白くしんじゆのようにかがやく、夏の太陽。

 風がかすかに草の葉をらす、みどりの草原。

 そんなターナーの名画を思わせる風景の中に、連合軍第501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズの基地はあった。

 かすかに陽炎かげろうが立つかつそうすみに置かれた、デッキチェア。

 水着姿でそこにそべり、なめらかなはだを焼いているのは、リベリオン出身のシャーロット・E・イェーガーたいと、ロマーニャ出身、ウィッチの中では一番年少のフランチェスカ・ルッキーニ少尉である。

 ツインテールのくろかみのルッキーニは、言いたいことを口にせずにはいられない、みんなの可愛かわいい妹分といったところ。

 ブラウンの髪を風になびかせるシャーリーは、「グラマラス・シャーリー」の二つ名が示す通りのナイスバディをほこる、おおらかでがおを絶やさない美少女だ。


「お〜、お帰り〜」


 空をっていた二機のウィッチが降りてくるのを見て、シャーリーは気のけた声をかける。

 着陸したのは、オラーシャ陸軍から来たサーニャ・V・リトヴャク中尉と、スオムス空軍出身のエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉。

 北国の出身である二人は、き通るような白い肌をしている。

 そう。

 ネウロイのしんこうに対するブリタニアのイージスのたて、ストライクウィッチーズは、各国の精鋭を集めた連合部隊なのだ。


「相変わらず、きんちようかんのない方々ですこと。戦闘待機中ですわよ」


 と、シャーリーたちのかたわらにやってきて声をかけてきたのは、ゆうがさを差したペリーヌ・クロステルマン中尉。

 メガネの奥のひとみに知性の光るこのきんぱつの少女は、ガリアの貴族の出。

 しやげきにおいても、フェンシングにおいても他者に引けをとることがない自信家だ。


「データかいせきだと、あと二十時間は来ないはず。ちゆうから許可ももらってるし、それに暑いし〜、見られて減るもんでもないし〜」


 ペリーヌにいやを言われても、シャーリーはいたってのん気だ。


「ペリーヌは、減ったら困るから、いじゃダメだよ〜」


 ルッキーニは、シャーリーのいたってごうかいな胸と、ペリーヌのかなりひかえめなそれを比べて、ニッと笑う。


「お、大きなお世話です! まったく!」

 つんとました表情を見せるペリーヌ。

 どうやら、人並みはずれて小さいという自覚はあるらしい。


「間もなくさかもと少佐がおもどりになります。そうしたら、真っ先に、あなたがたのたるみきった行動について進言させていただきますわ!」


「告げ口する気? 感じ悪〜」


 と、胸を揺らすシャーリー。

 シャーリーとペリーヌは、前々から反りが合わない。

 シャーリーの能天気さがペリーヌの神経をさかでし、ペリーヌの上品ぶった物言いがシャーリーにはとてつもなく嫌味に聞こえるようだ。


「ぺたんこのくせに〜」


 ルッキーニもシャーリーのしりうまに乗る。


「おだまりなさい! って、あなたにだけは言われたくありませんわ!」


 と、ペリーヌがルッキーニをにらみつけたその時。

 基地全体にひびわたるように、サイレンが鳴った。


「!?」


「敵!?」


「まさか!? 早過ぎる!」


 厳しい表情をかべたペリーヌは、ハンガーに向かって走り出す。

 ルッキーニとシャーリーも、先ほどまでとは一変したしんけんな顔つきで軍服をわしづかみにすると、そでに手を通しながらペリーヌの後を追った。


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