コント 殺し屋

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

ギターケースを足元に置き、佇む富澤。

通りかかる伊達。

伊達「すいません、あの富澤さんですか?」

富澤「名前を言え」

伊達「すいません、僕、殺しの依頼をした伊達というものです」

富澤「よく、俺のことがわかったな」

伊達「いや、結構、殺し屋っぽい雰囲気出てますよ」

富澤「俺の後ろに立つな!」

伊達「いや、立ってないですけど。完全に向かい合ってますけど」

富澤「ただ、言ってみたかっただけだ」

伊達「大丈夫かな、この人。(間)まあ、あの、依頼を受けて下さるんですよね。結構、心配だったんですよ。依頼の窓口が、出会い系アプリだったんで、本当に来てくれるのかなー、なんて。男にメッセージ送るの、結構恥ずかしかったんすよ。しかも、いくら課金しても、なかなか承諾してくれないから、『こいつサクラなんじゃないのかな』なんて思ったりして」

富澤「普段はサクラのバイトをしている」

伊達「え、サクラのバイトしてるんですか? 殺し屋が? だから、依頼のやり方が出会い系サイトだったんですか?」

富澤「殺し屋がサクラのバイトをしちゃいけないのか?」

伊達「いけないということはないですけど」

富澤「俺は金さえもらえば、誰だって殺す。人間以外はな」

伊達「人間以外って、あんた誰殺すんだよ。殺し屋は人を殺すのが職業だろ」

富澤「俺の後ろに立つな!」

伊達「だから、立ってねえよ」

富澤「それで、誰を殺して欲しいんだ?」

伊達「いや、実は、ライバル会社の社長をやってほしいんです」

富澤「なるほど、料金は15万円だ」

伊達「結構、安いんですね。人殺すんですよ。逆に不安になるわ」

富澤「今ならアプリでクーポンを配っているぞ」

伊達「クーポン使える殺し屋なんですか? ますます怖くなってきたわ」

富澤「俺は庶民の味方だ」

伊達「庶民の味方が殺し屋しますか、普通?」

富澤「つべこべ言うな! 払えるのか?」

伊達「払いますよ、全然払えますよ。え、それで、口座とかは? あ、あれでしょ。スイスとかケイマン諸島とか、そういうところでしょ」

富澤「みずほ銀行池袋支店だ」

伊達「みずほ使ってるんですか。いや、絶対足がつくでしょ、それ。俺まで巻き込まれるんじゃないですか」

富澤「安心しろ。まだ捕まったことは一度もない」

伊達「そうなんすか。それを聞いて、ちょっと安心しました」

富澤「まだ一度も仕事を請け負ったことが無いからだ」

伊達「え、まだ誰も殺したことないんすか? え、初心者なの。初心者の殺し屋なの?」

富澤「待て! これを見ろ」

スーツケースを指差す富澤。

伊達「その中に、もしかして、銃が入ってるとか」

富澤「いや、ギターが入ってる」

伊達「なんで、殺し屋がギター持ち歩いてるんだよ」

富澤「いや、今日バンドの練習があったから」

伊達「殺し屋がバンドなんかやるなよ。もういい、別の人に頼むわ」

帰ろうとする伊達。

富澤「おい、待て!」

伊達「なんだよ」

富澤「キャンセル料、7万だ」

伊達「誰が払うか!」

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コント 殺し屋 ジャンボ尾崎手配犯 @hayasiya7

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