第2話 神父の告白
「これは一体どういう事なんですか神父!」
いつもは温厚なエクスも我を忘れ強い口調で神父に問いかけた。
神父は全てを悟ったかのように諦めの表情を見せながら言った。
「そうか、いくら改心しても気配までは変えれねぬのか……残念な事だ」
そう言うと、温厚な神父の姿はたちどころに変わり、その姿は神父とは全く異なる容姿、金の長髪を棚引かせている女性、傍には随伴として黒豹を連れていた。
「私の名前はヘーメラー、ここの想区の守護神であり庇護者だ」
「なぜ神であるあなたが、ヴィランを庇うのです!」
「ヴィランの中にも改心したものもいる、改心したものは許すそれが道理に沿うとは思わないか、普段は擬態をし、そなた達の様に想区を訪れる者をやり過ごすため、仮に冒険者から例え酷い仕打ちを受けても堪える様に常に言い聞かせている」
「そうは思えません!」
その時階段の上の方から凛とした声が聞こえてきた、シェインの肩に手を掛けながら出てきたのはレイナだった、レイナは怒りに満ちた瞳でヘーメラー睨む。
「レイナ、お前は奥にいろ!まだ体調が戻っていないはずだ」
タオは麻痺をヘーメラーに掛けようとしたが、瞬時に跳ね返されてしまう。
「無駄な事をするな!私はその程度では倒せない!」
「クソ!」
「タオ待ってくれ!落ち着いてくれよ、ヘーメラー、まさかとは思うがもしかしてここの想区の住民は全員」
「そう、エクスよその通りだここの住民は全てカオステラーから逃れてきた流浪のヴィラン達なのだ」
「住民が全員ヴィランだなんて、まさか!」
「信じがたいだろうが、それが真実なのだ」
レイナは瞳に涙をためながら訴えかけるように言った。
「ヘーメラー、私のいた想区はカオステラーにもたらされたヴィランにより蹂躙され平和な王国は崩壊、私は大好きな居場所を失ってしまった、そんな事をするものをどうやって許せというの?私は絶対許しはしない!」
「そうかそなたもカオステラーの犠牲者なのだな、悲しき運命を背負ったものか、ただそなた達には分るまい、空白の書を持つものとして自由を謳歌せし者には生を受けながらに魔物として生きなければならない運命を背負った者たちの苦しみを」
「どういう意味?」
「私が匿っていヴィランやその他の魔物達は様々な事情がある。ある者は沈黙の霧の中で迷ってしまい死の瀬戸際に追い込まれたもの、カオステラーに異議を唱え破門され行き場が無くなったもの、悪行に嫌気がさし放浪をしていた者、様々なヴィランが私を頼ってきた、それらを放って置けというのか」
「でも、私は許さない!」
「そうか、では私も自分の信条を曲げる訳にはいかない!そなた達と一戦を交えようともな!」
その時一人の住民が教会に入ってきた、住民の男は憔悴しきっている。
「大変だ!村の子供が全員ゴーストヴィランに連れ去られた!おまけに村のシンボルのカルネアデスの板まで持っていかれちまったあ~」
「むうう、そなた達には悪いが一時休戦をしたい、私はこの者たちの子供達を救い、カルネアデスの板を取り戻さなくてはならないからな」
「待ってください、僕達も一緒に行きます!」
「そうか、かたじけない、ご助力感謝する!」
「エクス何言ってるんだよ、ヴィランの子供なんか助けてどうするんだよ!」
「いや僕は行かせてもらう、彼らはどうやら本当にこの想区の住民として平和に暮らしているだけらしい、タオ、もし嫌なら来なくてもいいよ」
「わあ~ったよ、シェインどうする?」
「私は、兄いがいくなら異存はないよ、でも」
そう言ってシェインがかなり遠慮がちにレイナの方を見るとレイナは少し焦りの表情を見せながら強い口調で言い放った。
「フン!誰も私の気持ちなんか分らないのよ!」
「あっ待ってよ姉御」
シェインが止めるのも聞かずレイナは階段を上がっていき部屋に篭ってしまった。
「まいったな、エクスどうする?」
「仕方ないよ、今回はレイナは抜きで何とかしよう」
「でも、もしカオステラーがさっき奪われたカルネアデスの板の力を知っていたら、不味いことになるんじゃないのか?」
「そうなるね……」
教会を出ながら二人は無言になってしまった。
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