第2話初依頼と放屁のスキル

 俺はミートスパゲティーモドキを食べ終わると冒険者ギルドに直行した。

 女神様の忠告では最初は冒険者になって魔物を退治しろということだったからだ。

 俺は街の人に冒険者ギルドの場所を聞いて、冒険者ギルドに向かった。

 

 「ユウタさんですね。最初はFランクからのスタートになります。」

 俺は受付のお姉さんに冒険者に関して丁寧に説明を受けた。

 この世界では平民はファーストネームを名乗ることを禁じられており、

 騎士や貴族、一部の特権階級のみ名乗ることを許されているとのことで、

 俺の駒沢姓は登録で削除された。


 冒険者はランク分けされておりFが最低ランクでAが最高ランク、

 Sランクという国王が任命するランクもあるが俺には関係ないだろう。

 クエストもAからFに分かれており、自分のランクより上のものを受けることは出来ない。

 ランクを上げる条件は自分と同ランクのクエストを10回成功させるとのことだ。

 クエストはランクが上がるほど危険度と報酬が上がる。

 熟練の冒険者は自分の分を弁えたクエストしか受注しないそうだ。


 「ユウタさんはパーティーを組んでいない様ですし、王都近くでの薬草採りなど如何でしょうか。」

 「魔物退治は難しいのでしょうか。」

 「絶対に無理ということはないのですが、魔物退治はパーティーで行うのが基本です。腕に相当の自信がある方はお一人でやっていますが、ユウタさんは失礼ですがそうは見えません。」

 俺も自分の腕力に全く自信なんてない。

 「アドバイス有難うございます。」

 「薬草採りもちゃんと薬草かどうか目利きする必要があります。ユウタさんは文字も読める様ですし、ギルドで販売しています薬草の辞典を読めば大丈夫だと思います。薬草の辞典は3小銀貨になります。」

 ギルドでは薬草や魔物の辞典、ポーションや旅に必要な道具も売っていた。

 お役所的な所かと思ったら、意外と商魂逞しい部分もある様だ。

 「薬草と魔物の辞典を売って下さい。あと薬草の採取場所に関してもアドバイス頂けると助かります。」

 俺はお姉さんから薬草の採取場所を聞いてギルドを後にした。


 武器防具屋アニーチェ

 冒険者ギルドを出る前に数人で談笑していた冒険者達に話し掛け、品の良い武器防具屋を教えて貰った。

 カウンターにはガタイの良い30代と思われる女性がおり、俺が入るや否や話掛けて来た。

 「あんた、冒険者初心者かい。何か希望の品はあるかい。」

 「厚手の服とフード付きマント、靴、バック、武器は槍がいいと思っています。」

 俺は高校の選択学習で剣道を履修していたが、突きは禁止になっていた。

 単純に危ないという理由なのだが、突きは斬るよりも安易かつ効果的な手段である。

 武器のリーチを活かせつつ、斬るよりも動作そのものが簡単である。

 碌に武器を扱えない俺は槍を武器に選ぶことにした。

 「分かったよ。全て込みで5銀貨だけど手持ちで足りるかい。」

 「はい。大丈夫です。」

 「毎度あり。ナイフをサービスしとくよ。今日はもう遅いから街を出るなら明日にしなさい。」

 「ご忠告有難うございます。」

 冒険者ギルドのお姉さんからも夜は街の外を出歩かない方が良いと言われた。

 夜はアンデッドの魔物が闊歩し危険であるとのことだ。

 ある程度の経験を積んだ冒険者なら問題ないかもしれないが俺は冒険初心者だ。

 真っ暗闇の中で一人、アンデッドに急に襲われたら恐怖で漏らしてしまうかもしれない。


 俺は武器屋のおばさんから教えて貰った冒険者御用達の宿に行き夕食を食べ今はベッドの上にいる。

 「ステータスオープン。」

 俺は自分自身のステータスを確認することにした。


名前:ユウタ

称号:ゆうしゃ

LV:1

たいりょく:300

まりょく:200

ちから:100

みのまもり:100

すばやさ:100

かしこさ:100

ていこう:100


スキル:放屁LV.1 再現魔法


 放屁LV.1に意識を集中させていると、スキルの説明文が現れた。


放屁LV.1:任意にオナラをすることが出来る。レベルに応じて範囲や追加効果が増える。LV.1中範囲取得


 自分の好きな時にオナラをふることが出来るらしいが、だからどうだと思う。

 俺は次に再現魔法に意識を集中させた。


再現魔法:自身の記憶にあるものをまりょくを消費して再現することが出来る。生命体を再現することは出来ない。


 女神様から貰ったスキルで何だかチートくさい。

 一度試してみようかと思ったが、何が起こるか分からないし疲れて眠いので明日以降試すことにして寝ることにした。



 俺は朝早くに起き身支度を整え、街の外にある草原で薬草摘みに邁進した。

 街を出る時、門番に止められ焦ったが、クエストで外に出ると言うとそれ以降は何も聞かず通してくれた。

 街の中に入る為には通行税を払わないといけないらしいが、街にあるギルドのクエストを受ける場合は払う必要がないらしい。

 俺は朝から薬草摘みをしているお陰で規定の量は午前中に採取することが出来た。

 昼からは辞典に載ってあった薬草や毒草なども採取した。

 俺は薬草を採ることになって、俺の周りを魔物が囲んでいることに気付かなかった。


 俺の周りには4匹の狼の様な魔物がいた。

 最初、本物の狼かと思ったが、魔物辞典に載ってあった魔物に酷似している風貌からグレイウルフだと分かった。

 グレイウルフは群れで行動し、鋭い牙と爪で攻撃してくる魔物だ。

 俺は魔物の恐怖からへっぴり腰で槍を構え、どうしようか途方に暮れていた。

 (ヤバイ、槍で攻撃、まほうで迎撃、まほうなんて使えない。スキル、放屁、ほうひ、ひっ!)

 グレイウルフ達が一斉に攻撃しに飛び掛かってきた瞬間、俺は恐怖で放屁してしまった。


 ぶー!


 勢いよく俺の肛門から発せられたオナラは物凄い勢いで辺りに充満した。

 グレイウルフ達は俺のオナラを吸ったのか口から泡を吹き悶絶している。

 俺はグレイウルフの腹に無我夢中で槍を突き立て殺した。

 2匹目のグレイウルフを刺殺したとき、残りのグレイウルフは俺から逃げ出した。

 俺は半ば放心状態であったが、体の奥から漲る力を感じた。

 俺は地面に残った魔石とグレイウルフの牙をバッグに入れ、街に戻った。


 街に戻ると、俺は早速、冒険者ギルドに行った。

 「薬草の方は数もあり、状態も問題ないです。」

 「グレイウルフを2匹倒したときに魔石と牙を手に入れたけど、これも引き取ってもらえないでしょうか。」

 「えっ!グレイウルフを2匹単独で倒したのですか。グレイウルフはチームプレイに優れ、ソロの冒険者が苦手なのですが、それは凄いですね。魔石と牙もこちらで下取りできます。」

 「いくらくらいになるのでしょうか。」

 「薬草は8小銀貨、魔石と牙は2銀貨でいかがでしょうか。」

 命掛けで戦って2万円くらいとはと落胆したが、魔物が蔓延るこの世界ならこんなものかもしれない。

 「そちらでお願いします。」

 俺はその場で現金を受け取ると新しいクエストを受け、宿に戻った。

 

 「ステータスオープン」

 俺は夕食を食べ、ベッドの上で寝転びながら自身のステータスを眺めた。


名前:ユウタ

称号:ゆうしゃ

LV:2

たいりょく:330

まりょく:220

ちから:110

みのまもり:110

すばやさ:110

かしこさ:110

ていこう:110


スキル:放屁LV.1 再現魔法


俺のレベルは上がっていた。

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