ァノレト【ʌnÓlet】

病にきくもの

 朝起きたら、昨日よりも体調が良くない。

 どこがいつもと違うかはわからなかった。

 体温計は平熱を知らせるだけだった。

 近場で一番評判のいい病院へ行くことにして、診察を受けることにした。



 「過労ですね」

 そう、先生は冷静に言う。

 「しっかりと身体が休めていないことで疲れが抜けていない。

 少しでも身体はわかるように体調不良を訴えているんですよ」

 「先生のいうことを聞いて安静になさってくださいね」

 隣にいる看護士も笑顔で気遣ってくれた。

 「薬を出しますので朝夜に決められた分だけ飲んでください。

 眠くなるかもしれないので、運転等には気を付けて。

 数日飲んでダメならまた来院してくださいね」

 疲れているだけだったのだ。

 今日はもらった薬を飲んで休もう。

 だんだん良くなるだろう。

 



 「今日もお疲れ様でした」

 アシスタントをしている女性が制服を畳みながら言う。

 「なに、簡単な仕事さ。ちょっと来る人が多いのが大変だが」

 カウンセリングの本を読みながら返事をする。

 何も問題はない。

 安心する状況を作っておいて、安心する言葉をかける。

 たとえ、変なところがなくても、『症状が出る薬』と一緒に出しておけばいい。

 潜伏期間と治療期間は少なからずあるのだから。

 たとえ、不治の病だとして、本人に自覚症状がなければ私が悪者にはならない。

 『別の病』は治しているのだから。

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