認識外のオーディエンス

ちはや

序章、というか思い出。

「かーくん。遊びましょ」


僕の名前が呼ばれた。かーくん。不思議な名前。くんって言うのは名前につけるものだと僕は知っている。つまり僕の名前は『かー』なのだ!


「わかった。いーちゃん」


この子はいーちゃん。ちゃんも女の子の名前につけるもの。だから名前は『いー』。不思議な名前だから、大人に聞いたら、『しきべつばんごうだ』って言われた。しきべつばんごうがなにかは分からないけど、大人はめんどくさそうに答えていたからこれ以上は聞いちゃいけないのかもしれない。


「おせーぞかーくん!」

「早くしろよ!」

「今日はかくれんぼだぜ!」


あーくん、うーくん、えーちゃん、おーくん、きーちゃん、くーくん、けーちゃん、こーちゃん、さーちゃん、しーくん、すーちゃん。みんないる。あーくんはみんなのりーだーだ。


「えー?今日はたんけんしようよー」

「大人がいるから出来ないよ」

「ちゃんばらは?」

「おままごと!」


みんなの意見がバラバラでも、あーくんがいえばそれに決まる。


「今日はかくれんぼにしよう!」

「「「「「「おー」」」」」」


みんなでジャンケンして、鬼を決めて、夕方まで遊ぶ。毎日みんなで遊んでいる。








急に大人達が忙しそうに働き始めた。僕は4歳。あと何年したら働けるんだろ。みんなのんびり畑でいろいろ育てていただけなのに、女の人みんなでたくさんのきれいな布を織ったり、男の人みんなでシカやイノシシやウサギや、とにかくたくさんお肉を取ってきたり。


「偉い人が来るから、しばらくは外で遊んではダメだぞ」


毎日のように遊んでいたのが、急に遊べなくなった。毎日がつまらない。でも大人達が言うならそうしよう。今日はお絵かき。


「レヴァクレス王国、神託の姫、エリザ様である」


体全部銀色で、硬そうな人がいっぱい来た。大人に聞いたら鎧だって言われた。カッコいい。囲まれているのは綺麗な女の子。僕より少し大きい。


「これはこれはよくこんな辺境まで足を運んでいただきました」


村長がペコペコ頭を下げてる。お姫様はえらいのか。


「さあ、宴会にしましょう!」


いっぱい美味しいものを食べれた。お姫様のおかげなのかな。お姫様ありがとう。







お姫様が来てから3日目。みんなと会えないから寂しいな。外を走ることも出来ないし。むむ。抜け出そうかな。力いっぱい走れば見つからないんじゃないかな。きっとそうだ。よし。


「わぷ」

「きゃっ」


誰かとぶつかってしまった。柔らかい。


「そんなに急いで、どこに行くの?」

「あ」


僕がぶつかったのはお姫様だった。ぶつかった僕を姫様は抱きしめてくれている。周りにはよろいを着た人たちや大人達がいる。しまった。怒られちゃう。


「姫様から離れろ!」

「こら!なんで外に出ているんだ!」


ほら、怒られた。少し怖くて、お姫様に抱きつ口からを強くする。するとお姫様がこう言ってくれた。


「子供がいないと思ったら家の中にいたのですね」

「子供はやたらと粗相をするので、家の中にと思ったのですが……………」

「子供というのは外で楽しく遊んでいるものです。家の中にいるだけでは遊ばせてあげないと」

「は、はあ。では」


大人が、みんなの家に向かっていく。みんなが出てきた。これで遊べる。でも、お姫様は?


「お姫様はあそばないの?」

「こら!お前なんてことを!」


大人は怒ったけど、お姫様は優しく言ってくれた。


「私は大丈夫。やらなきゃいけない事があるから遊べないのよ」

「やらなきゃいけないこと?遊べないの?可哀想」

「でも、私しかやれないから」


そう言って、お姫様は僕の首を撫でる。すると、目が少し怖くなった。どうしたのかな。そしたら、顔を近づけてきて、小さな声で話し始めた。


「あなたもなのね……………」

「え?」

「何でもないわ。それより、私と約束。あなたが、すごく大変なことが起きたら、森の翼って言葉を思い出して」

「約束?」

「そう。出来る?」

「出来るよ!僕偉いもん!」


そう。きっと覚えてる。お姫様との約束だもん。







お姫様と約束をしてから3日くらい。お姫様たちと森へお出かけすることになった。いーちゃんや、ほかのみんなも一緒。大人達もいる。


「お姫様。どこへ行くの?」


お姫様はちょっとこっちを見てでも、そっぽ向いてしまった。何でだろう。大人達に聞いてみよう。


「姫様は今集中している。チョロチョロするな。儀式の邪魔だ」


ぎしきってなんだろう。


「儀式がわからない顔をしているな。儀式っていうのはな、お前達の価値が分かる大事なものなんだ。大人しくしてろ」


おとなしくしてろと言われたら、そうするのがいい子だと聞いた。僕はいい子。前に石の建物が見えてきた。


「着きました。子供たちよ。そこに立ちなさい」


お姫様がやっと喋ってくれた。けど、いつもとなんか違う。


「お姫様、大丈夫?」

「早くそこに立ちなさい」


聞いてくれない。大人達に背中を押され、石の建物に立つ。姫様が片手を上げると、ぶわーっと光が森に広がっていく。それにつられて、他のみんながオレンジ色や青色に光り出した。あーくんの光が一番大きい。


「お姫様、これは何?」

「あなた達の素質です。上から順に1番、12番、5番、2番、4番、11番、13番、9番、7番、8番、3番。そして」


すっとお姫様が指を指すのは僕。


「6番は忌み子(バグ)です。」

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