神霊黙示録~四神四霊の契約者~
孔雀竜胆
第一章[青龍の章]
第1話【いつもの朝】
暗い…
見渡す限りの暗黒…
その闇は引きずり込まれそうなほどに深く、負の感情が具現化しているようだ。
闇以外何もない世界
これがあの世なのだろうか
もしそうだとしたら…
◆◆◆◆◆
ピピピ、ピピピピ、ピピピピ…
「またか…」
ここ最近はこの電子音が不快に思えてきた。
特に今日のような悪夢を見た後の朝ほど不快に思える時はない。
「…まだ大丈夫だな」
目覚ましはこの時間にセットしたが、準備と言っても大して時間もかからない。
危ない魅力溢れる至福でもある二度寝をしてしまおうか…
いや、やめよう
そんなことをしているとアイツが来た時にいろいろと口喧しいからな
そう思案している内に、寝室に足音が近付いてくる。
ガチャッ
「なんだ…今日は起きてるじゃん」
いつも通りに制服を来た紫色のショートヘヤーと同じく紫の瞳の女子が、ノックもせず何も言わずドアを開けて侵入して来やがった。
しかも、何気に失礼なこと言ってやがるし…
「
この失礼なヤツは
俺とは幼稚園からの幼馴染みの関係にある。
謂わば腐れ縁というヤツだ。
俺の家の勝手を知ってる感はあるが、別に同居しているわけではない。
歌南の家はかなり近い距離で、毎朝何故か俺を起こしに来てるだけだ。
俺が理由を聞いても歌南ははっきりと答えてくれないから、そうしてくれるのかわからないから何故かだ。
まあ、幼馴染みだから歌南のことは大体わかっている、だから理由はなんとなくはわかっている。
俺は高校に入ってすぐに両親を喪って、一人でこの家に暮らしている。
自惚れかもしれないが、歌南はそんな俺が心配で毎朝来てくれるんじゃないかと思っている。
「いつもなら気付かないでしょうに」
「そういう問題ではなくてだな…異性の部屋に入るんだから、少しは気にしろって」
俺が言うのもなんだが、歌南の顔は正直均整がとれていて俗に言う美人顔だ。さらに髪は艶やかで瞳もアメジストのように綺麗だと思う。
現に、はっきりした性格もあってか昔から男子は勿論女子からも人気がある。
それなのに男の部屋、しかも朝にデリカシーもなく突撃してくるのはどうかと思うんだ。
「いいじゃん、アタシと
この発言をコイツに好意を寄せている連中に聞かれたら、誤解されて俺が物理的なおはなしする羽目になりそうだ…
「と言うか、こんな無駄な話してる暇なんてないんだけど」
「やべ…」
時計を見るといつもよりかなり針が進んでいる。
どうやら少々無駄話がすぎたようだ。このままでは学校に遅刻する羽目になる。
「前みたいに早く起こしてあげたがいいのかもね」
「それだけは勘弁してくれよ…俺は帰宅部だっていうのに朝練時間に起こされたら堪らん」
「なんならアタシが朝練してエースにしてあげようか?」
「遠慮しておくよ」
歌南は幼少の頃からテニスをしていて、実力もかなりのもので地元では名が知れていた。高校でも勿論のごとく硬式テニス部に所属していてた。
なぜ過去形なのかというと、今は退部しているからだ。
歌南はつい最近大きな事故に巻き込まれて、生死の淵をさまよった。
命こそは助かったが、怪我で前のようにテニスが出来なくなってしまった。
そのため歌南は部を辞めて、今では俺と同じ帰宅部になっている。
勿論引き止められたらしいが、本人の意思は固く惜しまれながらも退部したらしい。
お陰で俺は朝練時間に起こされることはなくなったのだが。
「って、だから無駄話は止め止め。早く着替えなさいよ!」
そう言って歌南はさっさと部屋から出ていく。
確かに早く着替えないと間に合わなくなるな…
◆◆◆◆◆
着替えて準備まで終えて、朝食をとるたためにリビングに降りる。
少しでも腹に入れとかないと持たないからな。急げばなんとかなる時間だから大丈夫だろう。
「ほら」
「うおっと!」
そう思っていたら歌南がボール状の物を投げつけてきた。
それをなんとかキャッチしたが、もう少し丁寧に渡せよ。
その物体はラップに包まれたおにぎりだった。
「なんかここ最近毎日だと申し訳ないな」
「気にしなくていいって、今日は母さんじゃなくてアタシがやったから」
「そうなのか!?」
「そこまで驚くってどういうことよ…」
「いや、深い意味はないさ。ただお前ができるとは思わなかった。」
「悪かったわね、女子力低そうで」
ここはノーコメントにしておこう。
でないと、大目玉を食らいそうだ。
「じゃ、アタシはユウが待ってるから行くから」
「ああ、わかった」
いつも起こしてはくれるが、流石に一緒には登校しない。
お互い勘違いされたら困るからな。
それに歌南はいつも親友のユウこと
「このアタシが起こしたんだから遅刻するんじゃないわよ」
「はいはい、いつもありがとな」
「感謝するなんて、今日の天気は晴れのち槍ね」
そんな捨て台詞を吐いて、歌南は俺の家を出た。
そこまで珍しいことじゃないのに、ホントに失礼なヤツだ。
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