超光速ハナクソ-05

「よう、なんだよ超能力って」


 会ってそうそう、薄笑いを浮かべた友人がそう切り出す。

 まぁそうなるわな。


「超能力って言ったら超能力だよ。少し限定的だけどサイコキネシスだ」


「……」


「お前今『うわぁ……』って言う顔してるぞ』


「モルダー、あなた疲れているのよ」


「モルダーじゃねぇ!」


 とにかく見てもらおうと思い、カラオケかどこかに入ろうと言う算段をしていた俺達の向こう側で、突然悲鳴が上がった。

 さっきのテレビ番組の妄想の中で上がった悲鳴がフラッシュバックして、俺は思わず身をすくめる。

 いやいや、まて。俺はまだハナクソも飛ばしてなければ、ほじってすら居ないぞ。


 悲鳴とざわめきが、休日の駅前の雑踏を急速にこちらへと近づいてくる。


「なんだ? 何かあった?」


 そう言って振り返った友人の背後に、馬のマスクをかぶって、手に血塗ちまみれの柳刃包丁を持った男が、肩で大きく息をしながら立っているのが俺には見えた。


「きょええぇぇぇぁぁぇぇぇあぁぁぁ!!!」


 馬野郎は謎の奇声を発して友人の脇腹に包丁を突き刺す。

 包丁の先が、友人の腹から突き出しているのを俺は呆然と見つめた。


「え? ちょ……え?」


 ドサリと友人が地面に崩れ落ちる。

 包丁から血を滴らせた馬野郎が次に俺に狙いをつけたのがすぐに解った。


 殺される。


 せっかく超能力に目覚めたのに、俺はこんな所でサイコ野郎に殺されて死ぬのか?

 あ、いや待て。


 そうだ、俺は超能力者じゃないか!


 逆に俺の超能力でこいつを倒してやる!

 木っ端微塵になった百均のゴミ箱を思い出し、俺は馬野郎と対峙した。

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