第19話 ganesha sharanan

気高き文殊菩薩に敬礼す


コールアングレに身を切るような陰惨な音色にあわせて、


死を身近に感じて


私は一人、門の前に立ち尽くす。


大師の御足のもとに、花をささげるよりも、


美徳の花々を。


死があまりにも近く、甘美で、


女性性のエセンスである慈悲に満ちて


愛はその大いなる太陽系における目的を開示し始める。


この前、私が夢見た永遠の愛の花は、いまや種を実らせんとする。


涙にぬれた袖口が、原始爆弾よりも強いのなら、


それは、強さの次元が違うのだ。


一人孤独に、賢者はさすらう。


静けさと深い静慮とともに。



観念もスノビズムもなしに向き合ってほしい。


生に、死に、ありとあらゆることに


そうすればそこに愛と慈しみがあるだろう。


そうだ 、おれは愛の意義を求めよう。


魔術師である俺は、四大元素と錬金術の秘密に通暁する。



五つめの元素は空だ。


君たちは知っているだろう。


時として御伽噺の主人公が現実の人物より強く胸を打つことを。


ひゃっはっはっは!


愛には、現実と非現実の区別はない。



亡霊のような賢者の怪しい目


横断歩道を往来する幽霊



君のエゴだ、愛に現実と非現実があると思うのは。


リアリストはアイデアリストであり、


アイデアリストはリアリストだ。



遠吠えするジャッカルは、獲物に殺される。


漆黒の揚羽蝶の国で。



そこでは、天は地とひとつであり、



色は空であり、空は色である。



om a ra pa cha na dhih


至福が見える!!



手を伸ばせば届くようだ。


嗚呼、指一本でもいい。


届くなら、指一本でもいい。


エジソンは電気とは何か生涯わからなかったそうだ。



わたしも愛とは何かわからないんだよ。



わかってたら豚だ。



vajrasattva ah hum sphotaya trat



om vajrapani hum

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