第16話 吸血鬼

すべての女が吸血鬼である。というのは心理学上の真実だ。


女とは鰐なのだ。


愛が永遠なら、永遠とは久遠への憧れなのだろう。


手の届くはずもないオアシス。


君たちは、その辺のなんということはない一人の女の子でも怖がるに違いない。


官能とは科学的に言って恐怖だから。


切腹する武士。恋愛の狂気。


風になびく葦。だだっ広い荒野の寒い風。


見つめあう恋人の瞳には、愛の女神ヴィーナスが海原で水浴びをする姿が映る。


石灰岩のトルソー 石炭の音楽


ダイアモンドの響き。


私はそもそも本質的ではないことに戦いすぎてるのだろうか。


まあ、社会というのが自己の総体なのだから。



王子と召使が、白い肌の女にかかっている白い布を取り去る。


ヴェールをはがれた女。



今日は、どんよりとした快晴。


美が痙攣なら、その痙攣が四六時中お前を蝕むだろう。


美の山頂において、呪われた歓喜が、


その呪縛により、繰り返される円環を侵食し、


お前を亡き者とし、一切の幻想を終わらせるように。


夢から覚めよ! 水よ、非存在であることが明らかになれ!


すべては神々しくも禍々しい、エデンに帰ってきたアダム。


夢から覚めよ! 水よ、非存在であることが明らかになれ!

 

一切を抱擁する闇は、輝く漆黒の大黒天のごとくたち現れる。


夢から覚めよ! 水よ 、非存在であることが明らかになれ!


中心には三重の火がよろめく、ただ一切の現象が空である、その炎の中に。


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