第3話 病院に現れる子どもの幽霊

 女性は聞いてもいないのに、次々と楽しそうに話を続けました。内容は大体こんな感じです。


 足を骨折して3階に入院中の男性が、ある夜中、コーヒーを飲みに6階の自動販売機へ向かったそうです。そこでコーヒーを買って、エレベーターで3階に戻ろうとすると、地下1階からエレベータが6階へ来たそうです。ドアが開いて、エレベータに乗り、男性は3階を押す。エレベータが次第に下がり、3階に来たのに止まらない。おかしいな? と思いながらもエレベータはそのまま下へ、ついに地下1階へ着いたのです。ボタンの押し忘れか何かかな? そう思って地下1階にある施設の説明を見ると、そこにはこんな言葉が書いてあったのです。


「霊安室」


 こんな夜中に誰が? まもなくエレベータのドアが開くと、暗い廊下がずっと続いていて、奥がぼんやりとしていたそうです。男性は急いで閉まるボタンを押しますが、全く反応がない。すると、どこかから子どもの笑い声が聞こえたそうです。


ハハハハ……


 不思議に思っていると、何とぼんやりとした奥の方から、子どもがものすごい早さでこちらに向かって走ってくるのです。男性は急いで何度もエレベータのボタンを押しますが、全く反応がありません。その間にもすごい早さで子どもは近づいてきます。そして、次の瞬間、男性の下半身に子どもが飛びつくと、子どもはこう言ったそうです。


ツカマエタ……


 男性は叫び声をあげると、その声で目が覚めたそうです。気づいたら、男性はベッドの上だったそうです。怖い夢を見た、そう言って、看護師さんにその話をしたそうです。

 その後も似た経験をする人がいるみたいで、エレベータが勝手に地下1階にいったり、誰もいないはずなのに、地下1階では風を感じたり、子どもの影を見た、という人もいたみたいです。


 ——なんですよー、知らなかったですか? センセー、あらやっぱり話さなかった方が良かったですかぁ?——


 そんな事をいいながら、事務の女性は去っていったのです。


 ……いや、ふざけるな……


 私は思いました。というのも、ここ当直室は地下1階だったからです。しかも、人がほとんど来ない階なんです。私がその晩一睡も出来なかったのは言うまでもありません。

 ただ、話はこれで終わりじゃないんです。この話には続きがあるんです。

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