第1話 (魔王派の暗躍)
今から2ヶ月ほど前―
魔王派は文化祭の時の出来事に危機感を覚えて動き出した。
警戒強化である。
ちなみに普段は一般世間に融けこんでいて見つかりにくかったりする。
勿論一ノ瀬学園の教師や生徒の中にも存在する。
「高藤 恵美奈、異常はないか?」
『今のところは。』
「では、引き続き警戒に当たってくれ。」
『了解。』
プツリという音の後に通信が切れる。
「通信していたのか。
そちらの首尾はどうだ?」
「今のところは特に何もないといったところだな。」
「そうか。
こちらは目撃情報などから過激派の拠点のあたりを付けることには成功したが、動員された魔法警備隊の半数以上が爆発のトラップで死傷した。
とはいえ負傷者は軽傷が主だったが。」
トラップには痕跡を消す目論見もあったのだろうと推測される。
「魔王派のメンバーは軽傷以上の被害はない」
「報告御苦労。」
「後は予定通り人事異動で特定区域の魔法警備隊の魔王派の数を増やしておいた。
見まわりの頻度も増やすことになった。」
「さすがに警視長に登り詰めただけあって仕事が早いな。」
「警備隊に入ったのは情報を得るのに有用だからだが、警視長になれたのは運が良かっただけだ。」
「そう謙遜するな。
運があろうともそれだけの能力があるのは明白。
こちらの人員の配備も完璧に近い布陣をさっと出せるから、参謀に置いてるぐらいなんだから。」
「まあ、持ち上げられて悪い気はしないが。
では明日も仕事があるので今日はこれで。」
「お疲れ様。
…さてと、俺も明日の支度でもしますか。」
魔王派は表では役職上の上下関係こそあるが原則的に誰が偉いというのは存在せず皆対等である。
魔王派にとって魔王様は神の存在であり、宗教のきらいがある。
そして、統括がいて取りまとめているのである。
ただ、統括の希望者は少なくはないので統括者に何らかの問題があれば即交代が待っている。今の統括者は政治家である。
魔王派が動いていることは村山 正樹の情報収集能力をもってしても預り知らぬところであるが。
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