第14話 仏領インドシナ

 既に大日本帝国が押さえていた北部仏印から、さらに軍隊を南下させようとした政策を「南進政策」と言うが、南進政策によって、昭和16年7月28日に日本軍は、南部仏印に進駐する。仏印とは、当時の宗主国フランス領のインドシナの事であり、現在のベトナム、ラオス、カンボジア辺りの土地を指している。そこには豊富な石油や鉛などの資源が眠っており、南部仏印への進駐により、日米開戦となっても石油資源の枯渇はしないはずであった。ただ、その分の手痛いしっぺ返しは食らう事になる。南部仏印への進駐に成功した、大日本帝国陸軍の動きを察知した米国は、直ぐに「在米日本人資産凍結」及び「対日石油輸出全面禁止」を通告。時同じく、対米外交交渉は最終局面を迎える。アメリカ国務長官コーデル・ハルと日本海軍大将で、駐米大使を務めていた野村吉三郎らによる日米外交交渉は、決裂するのも時間の問題であった。同年11月26日に、かの有名な「ハル・ノート」の最後通牒を突きつけられた大日本帝国は、ついに日米開戦を決意する。まさか、日本としても仏印への進軍が、ここまで事を大きくするとは思わなかった。実行部隊こそ陸軍であったが、南部仏印への進駐は、海軍主導で行われた。決裂した日米交渉ではあったが、開戦の直接の要因を作ったのは海軍であるという見方も可能であろう。

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