第2話 宮崎のろくでなし
明治19年その男は、宮崎県に生を受けた。生まれてこの方、とにかくわんぱくで、親兄弟も手を焼く存在だった。中学にあがる頃には、毎日喧嘩三昧であった。ガキ大将と言う言葉は、この男の為にあるようなもので、現代ならまず、間違いなく少年院直通の札付きのヤンキーだった。それでも、近代化間もなかった明治日本で幼少期にあっては、餓鬼の喧嘩など存分にさせてもらえた。どうして喧嘩ばかりしていたのか?自分でもよくわかっていなかった。別に今の自分の状況に不満があるでも、気にくわない奴がいるという訳でもない。彼には平穏というものが退屈だっただけなのかもしれない。丁度思春期にあたる頃に、日露戦役が起こった為、彼自身の武者魂を震わせたから、海軍に入隊したのかもしれない。その男の名は、小沢治三郎という。後に空母機動部隊を生み出し、日本海軍の至宝とも呼ばれた、零戦の運用を本格化させた男である。この時はまだ、宮崎という土地にいる、ただのロクデナシであり、ただの人だった。
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